トランプ関税で、相場の乱高下が激しくなっています。
例えば、先週の日経平均株価ですが、月曜日が2644円安、火曜日が1876円高、水曜日が1298円安、木曜日が2894円高、金曜日が1023円安と、毎日「4桁」の値動きとなりました。
米国政府が中国への強硬姿勢を維持している中で、世界経済の減速懸念も出てきています。
しかし、そもそも、トランプ関税の目的とは何なのでしょうか?
トランプ米大統領は今年1月の就任演説の際、「自国民を富ませるために外国に関税を課す」と言っていましたので、自国民(米国民)を富ませる目的があるのは確かでしょう。
そのような中、トランプ米大統領に「絶対忠誠」の立場を貫き、元ヘッジファンドマネージャーでもあるベッセント米財務長官は先日、以下のようなことを語りました。
「米国人の上位10%が株式の88%、株式市場の88%を所有している」
「次の40%が株式市場の12%を所有している」
「下位50%は負債を抱えている」
「2024年の夏には、歴史上最も多くの米国人がフードバンク(食料を必要としている人々に無償で食べ物を提供する非営利の支援組織)を利用していた」
さて、このように、トランプ米大統領やベッセント米財務長官の発言からも分かるように、トランプ関税の目的として、特に米国人の下位50%(負債を抱えている)を救おうという発想がありそうです。
そして、以下のニュースです。
【トランプ政権の経済閣僚、米関税巡る金融市場の懸念を一蹴】
メディアは、株式市場の急落による「時価総額の消失」を叫んでいましたが、ここでもベッセント米財務長官は次のように語りました。
「相場急落は、オーガニック・アニマル(感情的に動く予測不可能な市場参加者)による短期的な反応だ」
「市場は常にドナルド・トランプ氏を過小評価している」
さて、ベッセント米財務長官の言う「過小評価」をどう捉えるかですが、周知のように、トランプ米大統領は「保守」であり、古き良きものを大切にし、時代が変わっても大事なものは残そうという考え方ですから、古き良き米国を取り戻し、それこそトランプ米大統領の言う「黄金時代」の到来を目指しているのではないでしょうか?
実際、トランプ関税について、ウォール・ストリート・ジャーナルは以下のように報じました。
【トランプ関税が狙う「グローバル化時代の幕引き」】
ここで、グローバル化時代を「WTO(世界貿易機関)が設立された1995年1月1日」から始まったと考えると、色々なことが見えてきます。
例えば、1995年の日本の年収中央値は、厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、約550万円でした。
しかし、2024年時点での年収中央値は約351万円でした。
つまり、グローバル化とは言うものの、約30年の間に、日本の年収中央値は約200万円も下がったわけです。
そして、米国も似たり寄ったりで、前述のように、「米国人の上位10%が株式の88%、株式市場の88%を所有している」一方で、「下位50%は負債を抱えている」ような社会となりました。
このように、「グローバル化」と言えば聞こえは良く、約30年の間に株価も大幅に上昇しましたが、多くの国民にとっては「ろくでもなかった」と言うこともできると思います。
そして、そんな「グローバル化時代の幕引き」を狙っているのが、トランプ関税というわけです。
そのような中、相場ですが、「WTO(世界貿易機関)が設立された1995年1月1日」を基準に考えますと、当時の日経平均株価は約19700円、ドル円は「1ドル=約100円」でした。
したがって、相場は再び、この水準を目指す展開となってもおかしくないと思います。
実際、前述のベッセント米財務長官に関連した、以下のような2つのニュースもあります。
【米関税、ベッセント財務長官が対日交渉 為替も議題に】
【ベッセント氏、円高ドル安懸念せず-円安是正介入や日銀利上げ支持示唆】
結局のところ、これらのニュースからも言えるのは、「日本政府は日銀に利上げを促して、円安を改めなさい」ということになります。
また、トランプ米大統領は第一次政権時に、「1ドル=130円の相場は長期均衡水準より3割も円安になっている」と指摘したことがありますので、前述のように、1995年の「1ドル=約100円」を目指す展開もあり得ると思います。
いずれにせよ、【「常軌逸した」為替ボラティリティー、関税巡る混乱でさらに悪化か】というニュースにもあるように、今後も為替相場のボラティリティー(価格変動の度合い)が激しくなるであろうことは十分に予想できます。
ところで今回、トランプ米大統領は新たに発動した関税の大部分を90日間停止すると発表しましたが、心変わりを促したのは「米国債の下落だった」と言われています。
「米国債の下落」は、金融危機の前兆とも考えられるので、今後も要注目かつ要注意です。
引き続き、相場は慎重さを持って取り組んでいきましょう。