【BRICS首脳会議の全体会合 「カザン宣言」を採択】
BRICSの首脳会議の全体会合が先週23日、ロシアの都市カザンで開かれ、ウクライナ侵攻でロシアが欧米などから制裁を科されていることを念頭に「国際法に反する一方的な経済制裁の撤廃を求める」などとした内容を盛り込んだ宣言を採択しました。
また現在、世界のほとんどの国が西側欧米ではなくBRICSの動きに賛同しています。
さらに、既に159か国が「BRICSの新しい国際決済システムに加盟する」と表明しているようですし、「ロシアのプーチン大統領が、ドルに代わるBRICS通貨紙幣を発表した」との報道もありました。
そして、このような動きが、今後のドルの国際的地位を脅かすものとみられています。
というのも、これまでは、貿易など、国と国が決済する際は、ほとんどがドル経由で行われてきたからです。
例えば、ドイツ・カナダ・オーストラリアの企業が日本企業から自動車を輸入する場合は、ユーロ・カナダドル・豪ドルと「日本円」が直接交換されるのではなく、一度ユーロ・カナダドル・豪ドルで「米ドル」を買い、その「米ドル」で「日本円」を買って支払いをするといった手順です。
しかし、BRICSの新システムではドルを仲介させる必要がないですし、既にロシアは、この新システムを使い、国際決済の95%を相手国の現地通貨と直接やり取りしています。
ロシアのプーチン大統領は、次のようなことを語りました。
「ドルは世界共通の通貨だ。しかし、私たちはドルの使用を禁じられた。そして現在、ロシアの対外貿易の95%は自国通貨建てとなっている」
つまり、米国の対ロシア経済制裁は全く効果無しで、むしろ「米国離れ」を加速させる自滅行為だったと言えるでしょう。
実際、2022年、米国は対ロシア経済制裁として西側欧米主導のドル決済システムSWIFT(国際銀行間通信協会)からロシアを閉め出しましたし、脱ドル化をしなければ、自分たちもいずれ米国からロシア同様の経済制裁を受けるリスクがあるという危機感が新興国の間で急激に高まった結果、世界のほとんどの国が西側欧米ではなくBRICSの動きに賛同する流れとなっています。
さらに、NATO(北大西洋条約機構)同盟の中で米国に次ぐ軍事力を誇るトルコまでもが「BRICSへの加盟を望んでいる」と公言しており、イスラエルがイラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラを標的とした空爆を行う中、トルコは国連でイスラエルや西側欧米(イスラエルを支援)を糾弾したのです。
そのような中で、トルコのエルドアン大統領は今回のBRICS首脳会議に出席したのですが、すると起こったのが次の事件でした。
【防衛企業に「テロ攻撃」 5人死亡、22人負傷 トルコ首都】
これは、おそらく、「トルコはBRICSに加盟するな」という西側欧米からのメッセージだと思います。
また、それだけ西側欧米も「陣営の維持に必死」なのだと思います。
しかし、その後、テロ攻撃を行ったとされる反政府武装組織「PKK(クルド労働者党)」に対して、トルコは直ちに反撃に出ています。
いずれにせよ、IMF(国際通貨基金)は「世界経済のパワーバランスがG7からBRICSにシフトしていることを確認」と述べていますし、G7(米国、英国、イタリア、カナダ、ドイツ、フランス、日本)が以前よりも弱くなってきたことは否めないでしょう。
では、そのような中、今後の「通貨世界」はどうなるのでしょうか?
少なくとも、今のドル基軸体制の崩壊にはまだ時間がかかるでしょうし、しばらくは米国側の通貨世界とBRICS主導の通貨世界が、並列して存在していくことになるでしょう。
ただし、今、急速に懸念が高まっている「米国の内戦」が起きると、ドル基軸体制崩壊の現実味が一気に増すでしょう。
実際、今年に入って、特に「金・銀・プラチナ・ビットコイン」の上昇が目立っています。
この背景には様々な理由がありますが、「ドル基軸体制崩壊を見据えて、BRICSが買い漁っている」「ロシアが西側欧米の制裁回避で、ビットコインを使用している」といった見方があるようです。
ですので、前述のように、世界経済のパワーバランスがG7からBRICSにシフトしていることを考えますと、「金・銀・プラチナ・ビットコイン」の上昇はまだ続いてもおかしくありません。
また、トルコのBRICS加盟が決まった際は、NATOにもBRICSにも入りということで、トルコの国際的なプレゼンス(存在感)が一気に高まるので、トルコリラも有望だと思います。
一方、前述のように、ドル基軸体制はまだ続くでしょうが、問題はやはり「米国の内戦」です。
10月4日、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』が全国公開され、この映画でも「米国の内戦」が描かれていますが、全米で2週連続1位を獲得し、日本でも初週の週末動員ランキングで初登場1位を記録するなど、話題沸騰中の作品です。
要は、それだけ「米国の内戦」が現実味を帯びているということです。
そして、ヘッジファンドの帝王と呼ばれるレイ・ダリオ氏も「民主党にも共和党にも選挙の負けを認めない過激な強硬派が存在しており、彼らによってこれから抜き差しならない対立に向かって進むだろう」と述べているように、米大統領選挙は、結果がどうあれ大混乱に至りそうです。
【アングル:大統領選当日は市場大荒れか、米金融機関が備え着々】
上記は先日のロイター通信の記事ですが、やはり相場は乱高下が警戒されているようです。
「2020年にトランプ氏が選挙結果に異議を申し立てたように、今回も同様の事態が起きるリスクがある」とのことで、これが相場の乱高下を招くとみられています。
相場については、引き続き警戒を怠らずに取り組んでいきましょう。