ドル円の行方(2024/5/13)

 

 

 

【黒田東彦・日銀前総裁「円安は一時的」・・・NYの講演で見解、マイナス金利解除・利上げは「当然のこと」】

 

 

 

 

 

先日、日本銀行の黒田前総裁は、米ニューヨークで講演し、現在の円相場について「円安は一時的なものだと思う」と述べ、歴史的な円安水準は長続きしないとの見方を示しました。

ただし、黒田前総裁は「円安が一時的」と見なす具体的な理由については明言しませんでした。

 

 

 

また先日、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏は、「米国の債務は344000億ドル(53595200億円)という前代未聞の水準を突破しており、これをなんとかしなければ、ドルは終焉を迎える」と述べました。

 

 

 

このように、黒田前総裁やイーロン・マスク氏の「円安が一時的」「ドルは終焉を迎える」といった発言を考慮しますと、ドル円は遅かれ早かれ、円高ドル安に修正されるのかもしれません。

ただし、「実際のところはどうなのか?」ということで、各種報道を読み解こうとする場合には、十分に注意することが必要です。

 

 

 

【報道自由度、日本は70位 G7で最低、国境なき記者団】

 

 

 

 

 

上記は共同通信社が先日報じたニュースですが、世界各国の報道自由度ランキングにおいて、日本は昨年から二つ順位を下げて70位で、先進7カ国で最下位だったということです。

したがって、日本の報道を鵜呑みにする限りは、様々な事実・出来事を正しく認識することはできないでしょうし、大きく報道されていない事実・出来事にも意識を向けないことには、現状認識に歪みが生じることになるでしょう。

ここで、一例として、為替介入について「誤解されていること」と「実際のところ」を整理します。

 

 

 

【誤解されていること】

日本は12789億ドル(1992526億円)の外貨準備がある。ただし、その外貨準備のドル預金は僅かで、80%程度が外国証券で、その大半が米国債と見られており、為替介入には米国債を売る必要があるというのがネックになる。

 

 

 

【実際のところ】

前回2022年の為替介入時は、全額を外貨準備の保有証券の米国債の売却で賄っており、米国債の売却は、やろうと思えばできる。さらに、いざとなれば米国債を売るまでもなく、通貨スワップで米ドルを調達することも可能で、必要であればかなりのことはできる。

 

 

 

 

 

そもそも、日本は国家として「円」を発行することができますし、そういう意味でも、神田財務官が「円買い介入(為替介入)の原資は無限にある」「為替介入に関して、世の中で言われている限界は全く間違っている」と語ったことは「嘘」ではなく、上記からも分かるように、要は日本政府が「絶対に円を防衛する!」ということで、どの程度「本気」になっているのかが重要なのです。

 

 

 

そういう意味では、先週、神田財務官が、為替介入を「いつでもやる用意がある」「極端に言えば、明日やるかもしれないし、明後日やるかもしれないし、必要があればいつでも適切な行動をとる」と述べたことは評価できます。

 

 

 

一方で、先日報道されたように、物価変動を加味した日本の「実質賃金」は、過去最長の「24カ月連続でマイナス」となっており、円安の「悪影響」が鮮明となっています。

さらに、ドル円の購買力平価(実質的な価値)はIMF(国際通貨基金)の試算で「9082銭」となっているわけですから、為替介入の「発言」なんかよりも、実際の「為替介入」を、とことんまで行うべきだと思います。

 

 

 

ここで、冒頭の黒田前総裁やイーロン・マスク氏の発言について考えますと、米国の現状について正しく認識することが重要になります。

 

 

 

しかし、前述のように、報道自由度ランキングで日本は70位ですし、肝心の米国も55位ですから、米国の現状について正しく認識するためには、大きく報道されていない事実・出来事にも意識を向けなければなりません。

 

 

 

すると、イーロン・マスク氏が「ドルは終焉を迎える」と言ったように、米国の酷い現状が見えてくるのです。

例えば、以下のような現状です。

 

 

 

 

 

3月の商業不動産の差押え件数が、米全土で前年同月比117%も増加した。中でも、カリフォルニア州の3月の差押え件数は前年同月比405%と驚異的な増加となった。

 

 

 

・米国の大都市では、殺人や車の窃盗、強盗などの凶悪事件が急増している。その結果、企業や人々が街からから逃げ出してオフィスビルの需要が激減している。

 

 

 

・高級ブランド店が万引きや集団強盗の被害に遭い、業界被害は年14兆円超にも上り、都心から多くの店舗が撤退している。

 

 

 

・雇用統計は、週に1時間働いただけでも就業者とみなされ、失業者にはカウントされず、LISEP(ルートヴィヒ研究所)の調べによると、米国の「本当の失業率」は24.2%となっている。

 

 

 

・雇用統計で「増加」と発表された就業者数も、その内訳を見ると「不法移民の労働者」の非正規雇用が増えただけで、「正規雇用」及び「米国生まれの米国人労働者」の雇用状況は悪化の一途を辿っている。

 

 

 

・専門家によると、生活するのにどれくらい費用がかかっているかを測るCPI(消費者物価指数)も、米政府はインフレ率を低く見せかけるため、「季節調整」という手段で大幅に改竄(かいざん)している。

 

 

 

20231月からだけでも、銀行全体から2兆ドル(3116000億円)以上の預金が流出した。

 

 

 

・米国の「クレジットカード延滞率」は、データ集計開始以来の最高を記録した。

 

 

 

 

 

さて、このような酷い現状の米国ですが、そんな米国の属国となって資金面で支えているのが日本であり、そのために「異常な円安」になっていると考えることができます。

 

 

 

ですので、一部では「1ドル=200円」説も出ており、それも「あり得る」と感じますが、同時に前述のように、黒田前総裁やイーロン・マスク氏の「円安が一時的」「ドルは終焉を迎える」といった発言、そして神田財務官の「為替介入をいつでもやる用意がある」「極端に言えば、明日やるかもしれないし、明後日やるかもしれない」という発言も無視することはできません。

 

 

 

 

相場は引き続き、買値、売値、ポジション量に留意して、慎重に取り組んでいきましょう。