現在、米国では商業用不動産のリスクが懸念される一方で、連邦政府とテキサス州が「不法移民」の対応を巡って対立し、内戦の可能性が指摘されています。
ところが、株式市場はNYダウが連日で過去最高値を更新するなど、絶好調が続いています。
この状況は、どう考えたらいいのでしょうか?
これらのニュースは「大げさ」なのでしょうか?
それとも、株式市場が「おかしい」のでしょうか?
ちなみに、日本の時価総額ランキング1位の企業はトヨタで、時価総額は48兆1537億円となっています。(従業員数は36万6283人)
そして、日本の時価総額ランキング2位の企業はソニーグループで、時価総額は18兆2563億円となっています。(従業員数は11万3000人)
一方、経済誌フォーブスの億万長者番付によると、米EV(電気自動車)大手テスラのイーロン・マスク氏個人の資産は30兆2600億円となっています。
このように、トヨタやソニーグループといった「大企業」の時価総額とイーロン・マスク氏という「個人」の資産を比較すると分かりやすいと思いますが、前述の疑問は、ニュースが「大げさ」というよりも株式市場が「おかしい」と考える方が妥当だと思います。
そのような中、ニュースについては、以下のように、先週は各国で不動産リスクに関するニュースが相次ぎました。
【中国恒大に清算命令 不動産業界に打撃―香港高裁】
【香港の銀行、商業用不動産市場の逆風に直面-フィッチ】
【香港、ローン残高が持ち家評価額上回る借り手急増-住宅不況深刻化】
【上海株は大幅続落、前週の上昇打ち消す 不動産大手の新築住宅販売額46%減で過去最低】
【オフィス不動産市場の損失、1兆ドル超える-富豪のスターンリヒト氏】
【米地銀NYCBジャンク級に格下げも、不動産リスクで-ムーディーズ】
【米NYCB株急落は銀行への警鐘、商業用不動産のリスク再認識】
【NYCBショック2日目、地銀株は大幅続落-投資判断引き下げ相次ぎ】
【NYCBショックで不安連鎖、ニュージャージー州の地銀を投資家警戒】
【あおぞら銀株がストップ安、米不動産向け追加引き当て-赤字転落】
【あおぞら銀ショック、米不動産リスク顕在化-株価2日連続大幅安】
【あおぞら銀行急落で保険株に警戒広がる、米商業用不動産の影響見極め】
ここで、「バブル研究」に関して「第一人者」として知られ、米資産運用会社GMOの共同創業者であるジェレミー・グランサム氏は、かつて以下のようなことを述べました。
「日本のバブル崩壊やリーマン・ショックが示すように、不動産バブルは乗り切れない」
まさに今、ジェレミー・グランサム氏が言うように、「不動産バブルは乗り切れない」という状況になってきているのではないでしょうか?
また先週は、中国恒大集団(不動産開発会社)に清算命令が出ましたが、中国恒大集団は昨年6月末時点で約50兆円の負債を抱えていました。
そのような中、中国恒大集団の大口債権者はスイス金融大手UBS、英金融大手HSBC、米資産運用大手ブラックロック・・・といったところとなっています。
すると、一見小さな問題が、小さな雪だるまが大規模な雪崩を引き起こすことがあるように、この問題が金融危機を引き起こす可能性はないのでしょうか?
そして、米商業不動産も大丈夫なのでしょうか?
機関投資家らは、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)を大量に買っていましたが、大丈夫なのでしょうか?
いずれにせよ、不動産マーケットから来る「負の連鎖」には注意が必要だと思います。
ところで冒頭で、米連邦政府とテキサス州が「不法移民」の対応を巡って対立し、内戦の可能性が指摘されていると述べましたが、どういうわけか、日本のメディアではほとんど報じられていません。
しかし、これは重大な問題だと思いますし、現に米連邦政府の国境警備隊とテキサス州の国境警備隊は対立する状況となっています。
ここで簡単に、米連邦政府とテキサス州の立場を整理してみます。
【米連邦政府】
バイデン大統領の国境政策のもと、600万人とも言われる不法移民が入国してきたが、不法移民は、前向きに移民を受け入れる政策を実施している民主党の票を上積みするだろうと考えている。今年11月の大統領選挙で負けないためにも、前向きに移民を受け入れたい。
【テキサス州】
メキシコ国境から来る不法移民の増加とともに、凶悪事件が増加し、麻薬の密売や子供の人身売買が増加している。不法移民の入国は、テキサス州に対する侵略である。
上記のような立場の違いがある中、バイデン大統領は最高裁判所の判断を盾にして「メキシコ国境からのテキサス州兵の撤退」を命じましたが、テキサス州が反旗を翻しているのが現状です。
そして国境警備隊同士が対立するなど、内戦の可能性まで指摘されているのです。
「はたして米国は健全なのか?」ということですが、現在の米国家債務は34兆ドル(5045兆円)を超えており、そのことで先日、米金融大手JPモルガン・チェースのダイモンCEOは「歴史上、最も予測可能な危機」と述べました。
日米ともに現状は株価が絶好調ですが、上記のような状況を考えると、いつ相場はひっくり返ってもおかしくありませんので、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。