FOMCと日銀会合

 

 

 

今年も残すところあとわずかとなりましたが、今年最後のFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀金融政策決定会合(植田総裁の記者会見)について振り返ってみたいと思います。

 

 

 

まずFOMC(米連邦公開市場委員会)について、今後のポイントになると思われることを以下に整理します。

 

 

 

 

 

FOMC参加者19人のアンケートによって示される経済見通し、政策金利見通しである「ドットチャート」によると、来年末(2024年末)の金利について、0.75%の利下げ(0.25%の利下げを3回)が中央値という予想になった。

 

 

 

・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、「不況が来なくてもインフレ率(物価上昇率)が下がれば利下げをする可能性はある」と発言した。

 

 

 

 

 

さて、ポイントは「利下げ」ということになりますが、最近の【NY株、連日の最高値 早期の米利下げ期待根強く】や【2024年のドル安観測強まる、FRBがハト派転換 鍵握る米経済動向】というニュースからも分かるように、相場は「株高・ドル安」で反応しやすくなっています。

 

 

 

一方で、パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、これまでは「不況が来ない限り利下げはない」というスタンスだったのに、前述のように、今回は「不況が来なくてもインフレ率(物価上昇率)が下がれば利下げをする可能性はある」と、スタンスを変化させていますので、市場では「何か(金融危機など)を警戒しているのではないか?」という噂も流れています。

 

 

 

そのような中、先日、英紙『フィナンシャル・タイムズ』は【世界の倒産件数が2008年を超える】と報じました。

つまり、世界の倒産件数が、リーマン・ショックのあった2008年の世界金融危機時のレベルを超えているということです。

 

 

 

また先日、日経新聞も【ユニコーン、米国で破綻相次ぐ 10月以降3社事業停止へ】と、米国でユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)の経営破綻が相次いでいることを報じました。

 

 

 

ですので、前述の「何か(金融危機など)を警戒しているのではないか?」という噂も今後は無視できないと思います。

 

 

 

次に、日銀金融政策決定会合(植田総裁の記者会見)について振り返りたいと思いますが、その前に、日銀が実施している「生活意識に関するアンケート調査」の結果を整理します。

 

 

 

 

 

1年前と比べて、景気が悪くなったという回答が55%

・「現在の景気が悪い」と感じる回答が65.6%

1年前と比べて、暮らし向きが「ゆとりがなくなってきた」という回答が57.4%

1年前と比べて、世帯の支出が増えたという回答が58.4%

1年前と比べて、物価が上がったという回答が95.5%

1年後の物価が、現在と比べて「上がると思う」という回答が86.8%

5年後の物価が、現在と比べて「上がると思う」という回答が80.7%

 

 

 

 

 

上記から言えるのは、「景気は悪く、物価は上昇している」ということです。

 

 

 

このことを踏まえた上で、今回の日銀金融政策決定会合後の記者会見では、記者から植田総裁へ、以下のような質問がなされました。

 

 

 

 

 

「消費者物価指数の上昇率が、もう20か月連続で2%超となっている。2%超の、インフレ目標以上の上昇が20か月になろうとしている。日銀が定期的に実施している生活意識アンケート、こちらで 8割(以上)の国民が物価上昇を困ったことだとずっと答えている。つまり、国民はもうこれ以上の物価上昇を望んでいない。経済界からも、早期に正常化をするようにという声も出ている。こういう国民の声があるのに、日銀は物価の番人としての使命を果たしていないのではないか?」

 

 

 

 

 

これに対して、植田総裁の回答を簡潔にまとめると、以下のような回答でした。

 

 

 

 

 

「私どもは、中長期的に2%の物価上昇が続くという姿を作り出すことを目指して、第二の力(賃金と物価がともに上昇する好循環)と呼んでおるものが育っていくということを目指して、持続的な緩和(マネーのジャブジャブ)を続けてきております。もう少し辛抱頂ければなというふうに思っております。」

 

 

 

 

 

つまり、日銀としては「賃金が上昇する(企業が賃上げする)」まで緩和(マネーのジャブジャブ)を続けるスタンスということですが、経済界からの声として、先月、日本商工会議所の小林会頭は「賃上げしても、(現状の)物価の高騰がそれ以上で、追い越すのは永遠に不可能」と、政府・日銀の物価対策を強く批判しました。

 

 

 

この小林会頭の意見には、私も同感です。

いずれにせよ、日本の現状は、しばらく変わりそうにありません。

 

 

 

そして日銀の金融緩和策(マネーのジャブジャブ)は、為替市場では円安へと作用します。

 

 

 

一方で、前述のように、現在の為替市場ではドル安観測も強まっています。

 

 

 

つまり、円安とドル安ということで、ドル円は「綱引き」状態にあるわけですが、各種報道によると、来年は「円高」かつ「円高ドル安」を予想する声が多くなっています。

 

 

 

その予想の根拠の一つとして、海外の主要中央銀行が、来年は利下げに向かいそうだからだといいます。

 

 

 

しかし、米金融大手のJPモルガンや英金融大手のHSBCなど、ドル高を予想する声もあります。

 

 

 

その予想の根拠の一つとして、世界各国が米国以上にリセッション(景気後退)に近づくという見通しがあるからだといいます。

また、ウクライナ情勢の長期化やイスラエル・ハマス紛争など、地政学的な緊張がドルを支えるとのことです。

 

 

 

したがって、今後もあまり「決め打ち」をせずに、相場はロング(買い建て)の高値掴み・ショート(売り建て)の安値掴みに気を付けながら取り組むのが良いと思います。

 

今後も、各種報道に注意を払いながら取り組んでいきましょう。