相場の世界には、オプション取引というものがあります。
簡単に言うと、「買う権利」や「売る権利」を売買する取引のことです。
例えば、日経平均株価を例にすると、3万円で「買う権利」を有していれば、日経平均株価が3万3000円まで上昇した場合に、権利を行使することで3000円安く調達できるといった具合です。
反対に、日経平均株価が値下がりして2万8000円になった場合は、3万円で「買う権利」を行使しないかわりに、権利購入時のコスト分が損失となります。
「売る権利」については、その逆ということになります。
そして、そんなオプション取引の特徴は以下のとおりです。
1.レバレッジを効かせられる
2.損失が限定される(オプションの買い手の場合)
3.証拠金が必要(オプションの売り手の場合、売り手の場合の損失は、最悪は青天井)
4.期限がある
さて、このような「基本」を踏まえた上で把握しておきたいのが、最近台頭してきた0DTE(ゼロ・デー・トゥー・エクスピレーション)についてです。
上記で説明した「期限」が、24時間以内の超短期となっているのが特徴のオプション取引です。
そして最近、以下のようなニュースが続いています。
【1ドル払って1000ドルの賭け、「0DTE」熱狂をあおる見えざる力】
【超短期オプション「0DTE」、米株20%下押しも=JPモルガン】
【「ゼロDTE」が普及、理解が追いつかないウォール街をかく乱】
【ゼロDTEオプションの熱狂、7.4兆ドル規模のETF市場に波及】
【ウォール街で人気のゼロ・デー・オプション、28日に欧州上陸】
【ゴールドマン、S&P500種急落の原因は「ゼロ・デー・オプション」】
【「ボルマゲドン」再来リスク、JPモルガンが検証-ゼロDTE巡り】
上記のように、最近は0DTEに関するニュースが相次いでいるのですが、最近は金融システムがどんどんカジノ化してきており、危うさをはらんでいます。
しかも、この0DTEにHFT(超高速取引、1000分の1秒単位で取引を繰り返す)までもが参戦している構図があります。
そのような中、上記のニュースでも指摘されていますが、投資家としては以下のような指摘があることを把握しておくべきだと思います。
・0DTEは、S&P500の日中5%の下落を25%の暴落に変えかねない
・0DTEは、極端なボラティリティーを引き起こしトレード不能な混乱に導く
・0DTEは、前例がなく、本当のところは誰も完全に分かってはいない
・0DTEは、市場の安定を揺るがしかねない
・0DTEは、ボルマゲドンを引き起こす
上記に加え、米金融大手JPモルガンのデータによると、0DTEの1日の想定元本は約1兆ドル(148兆3700億円)に拡大しているそうです。
このように、最近は0DTEが無視できない存在になってきているのは確かです。
ちなみに、前述のボルマゲドンとは、2018年2月に米国の株式市場でボラティリティーが突然急騰し、目算が外れて損失を被った投資家の大規模なポジション調整を誘発し、株価が急落した出来事を指します。
「NYダウ1000ドル安」「日経平均1000円安」といった動きが、数日間続いたのです。
そして、この時は為替相場も荒れました。
さらに、この時はVIX(恐怖指数)関連の金融商品で、元金の7~9割を失った「プロ」が世界中にいたとも報じられました。
しかし、ここで改めて冷静になって考えますと、このような近年の相場が「まともなのか?」ということです。
明らかに「まともではない」でしょうし、実際、このような状況を踏まえ現在は「マネー資本主義」や「カジノ資本主義」とも呼ばれています。
また、ここで最近のニュースを踏まえた上で、日本の現状を以下に整理してみます。
・家計の金融資産が過去最大の2115兆円となった
・対外純資産も過去最大の418兆6285億円で、32年連続で世界一
・円の実力レートが53年ぶり低水準となっている
上記から分かるのは、日本を国家全体で考えた時に、日本は「お金持ち」であるにもかかわらず、日本の「円」が弱過ぎるという事実です。
しかし冷静に考えれば、これは歪(いびつ)であり、前述のような「マネー資本主義」や「カジノ資本主義」の結果でもあるのでしょうが、それこそ今後は「0DTE」が暴走する等によって、弱過ぎる「円」が急騰していく可能性もあるのではないでしょうか。
このような背景を踏まえ、引き続き慎重に取り組んでいきましょう。