想定為替レート

 

 

 

輸出入を行う企業が業績の見通しや事業計画を決める際に、事前に決めておく為替レートとして「想定為替レート」というものがあります。

各企業が真面目に年間の為替相場を「予測」して設定しているものです。

 

 

 

しかし、日本の大企業の「想定為替レート」と、足元の実勢レート(1ドル=141.77円、85日時点)には大きな隔たりがあります。

 

 

 

 

 

【為替想定実勢より円高、平均1ドル=131.68円 日産など】

 

 

 

 

 

上記は先週の日経新聞の記事になりますが、日産自動車やキヤノンなど、日本の主要84社のドル円の平均想定レートは1ドル=131.68円と、足元の実勢よりも約10円円高に置いているそうです。

そして、今後の円高進行を警戒しているとのことです。

 

 

 

また、為替見通しを足元の実勢レートより円高方向に設定している企業は「9割超にも」上るそうです。

さらに、建設機械で国内最大手のコマツに至っては、「1ドル=125円」を想定しているとのことです。

 

 

 

ところで、これらはどのように考えたらいいのでしょうか?

 

 

 

私は、このように、実際に商売で「輸出入」を行う企業が予測して設定する「想定為替レート」の方が、足元の実勢レート(1ドル=141.77円、85日時点)よりも「まとも」だと考えます。

 

 

 

では、足元の実勢レート(1ドル=141.77円、85日時点)とはいったい何なのかと考えると、それは「マネーゲーム」の結果だと思います。

そして「マネーゲーム」であればこそ、いつ大きく円高に修正されてもおかしくないと思います。

 

 

 

そのような中、先週は「米国債の格下げ」のニュースで、株式市場が大きく揺れました。

 

 

 

 

 

【日経平均終値、548円安の32159円…2日間で計1300円以上下落】

 

 

 

 

 

具体的には、格付け大手フィッチ・レーティングスが米国債の格下げを行ったことで、投資家心理が悪化した結果、大幅下落となったようです。

 

 

 

これに対し、イエレン財務長官は「格付けの変更は恣意(しい)的だ」「米国債は世界有数の安全で流動性の高い資産であり、米経済の堅調さに変わりはない」と反論する声明を発表しました。

 

 

 

ところが、ついこの前まで、当のイエレン財務長官自身が、「債務上限を引き上げなければ、経済的および金融的な大惨事が起こる」「米国の債務不履行であるXデーが迫る」と言って、散々警鐘を鳴らしていたわけです。

 

 

 

ですので、イエレン財務長官の発言自体が「ちぐはぐ」な感じがします。

 

 

 

一方で、今回の米国債の格下げと同じようなことが、約20年前の日本でも起こりました。

 

 

 

当時、「日本」とアフリカ南部の内陸部に位置する「ボツワナ共和国」の国債が、海外の格付け機関大手3社によって、なんと「同じ格付け」にされたのです。

 

 

 

そして、それに対して「徹底的に反論」したのが黒田前日銀総裁であり、以下のように反論しました。(当時は財務省財務官)

 

 

 

 

 

「日本国債の格付けは強固なファンダメンタルズを考えると低過ぎである」

 

 

 

「今後さらなる格下げには根拠がない」

 

 

 

「海外の格付け機関には客観的基準がない」

 

 

 

「格付けの信頼性に大きな問題がある」

 

 

 

「格付けというものは財政状態のみならず、経済全体の文脈、とくに経済のファンダメンタルズを考慮して総合的に判断されるべきだ」

 

 

 

「日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」

 

 

 

「マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国である」

 

 

 

「日本国債はほとんど国内で、極めて低金利で安定的に消化されている」

 

 

 

1人当たりのGDPが日本の3分の1しかなく、かつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国があるが、どういうことなのか?」

 

 

 

「日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高である」

 

 

 

「ポンド危機やIMF借り入れのわずか2年後に発行された英国債や、相変わらずの双子の赤字が続く米国債がトリプルAの格付けを維持しているのは、どういうことなのか?」

 

 

 

「日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同じ格付けとなるが、それはどういうことなのか?」

 

 

 

 

 

上記のように、黒田前日銀総裁(当時は財務省財務官)は「徹底的に反論」したわけですが、いざ黒田氏が日銀総裁に就任すると、円の価値をどんどん下落させ、一部の人達から「円安総裁」と呼ばれるまでになりました。

そして、そんな「黒田路線」を続行させているのが、今の植田日銀総裁と言われています。

 

 

 

結局、今回の米国債の格下げは【株下落、長期債利回りが大幅上昇-格下げでもドル買い】と報じられたように、相場は「ドル買い」で反応しました。

 

 

 

前述のイエレン財務長官の発言と同様、相場もまるで「ちぐはぐ」に動いているようです。

 

 

 

そして、そんな「ちぐはぐ」な相場には、冒頭の「想定為替レート」のようなものは意識しつつも、あくまで「マネーゲーム」と自覚して取り組む必要があると思います。

 

 

 

 

相場の乱高下に翻弄されないようなリスク管理で、慎重に取り組んでいきましょう。