ドル高の「弊害」

 

 

 

【ドル高が世界経済を脅かす】

 

 

 

 

 

上記は先日ウォール・ストリート・ジャーナルで報じられたニュースですが、昨今のドルの急上昇による「弊害」について説明されていました。

以下にニュースの内容を整理します。

 

 

 

 

 

・欧州では記録的インフレ、日本では貿易赤字の急拡大に繋がっている。

 

 

 

・欧州はロシアとの「経済戦争」の最前線に立たされており、ドル高の一因となっている。

 

 

 

・中国は、何十年も続いた不動産ブームの崩壊を受けて、近年で最大級の景気減速に直面しており、ドル高の一因となっている。

 

 

 

・米国以外の世界各国は、ドル高の悪影響に苦しんでいる。

 

 

 

・ドル相場の上昇は、新興国の政府・企業の「ドル建て債務」の返済負担を拡大させる。

 

 

 

・米国以外の世界各国は、ドル高が食料品やドル建ての輸入品の価格を押し上げるため、より小規模な国が感じる痛みが大きくなる。

 

 

 

・「これ以上のドル高は、最後の決定的な一撃となるだろう」「フロンティア市場(市場規模が新興諸国よりも小さく、流動性が低い市場)は既に危機の瀬戸際にある。彼らが最も望まないのはドル高だ」と、調査会社オックスフォード・エコノミクスのガブリエル・スターン氏は話す。

 

 

 

・ピクテ・ウェルス・マネジメントのフレデリック・ドゥクロゼ氏は「ECB(欧州中央銀行)は、ドル高に対して無力だ」と述べる。

 

 

 

・ドル高は、米国企業が「国外で上げる利益」を圧迫している。

 

 

 

・ブラックロックのラス・ケステリッチ氏は「ドル高はほぼあらゆる主要資産クラスに逆風をもたらした」と指摘した。

 

 

 

 

 

さて上記のように、昨今のドルの急上昇によって、世界各国がドル高の悪影響に苦しんでいるのは間違いないと思われます。

 

 

 

日本円についても、先週は一時「1ドル=145円台」をつけました。

 

 

 

では、肝心の「ドルの実態」はどうなのでしょうか?

 

 

 

上記にもあるブラックロックですが、ブラックロックは「世界最大の資産運用会社」です。

運用資産残高は10兆ドルもあり、これは日本のGDP(国内総生産)の2倍以上に相当します。

 

 

 

そんな世界最大の資産運用会社、ブラックロックを率いてきたエドワード・ドウド氏は、以下のように述べています。

 

 

 

 

 

「新型コロナウイルスの拡大の陰で見えにくくなっているが、世界経済は破滅の際に追いやられている。各国の中央銀行は景気の下支えのために紙幣の増刷にまっしぐらだが、過去12年間、インフレは拡大する一方で、株価も債権も実体経済から乖離したまま膨れ上がってきている。ドルのインフレは歯止めがなく、米国が発行するドル紙幣の15兆ドル分は何ら価値の裏付けはない」

 

 

 

 

 

昨今の株価が実体経済から乖離したまま上昇してきたことについては、多くの人もそう感じていると思いますが、同氏によると「米国が発行するドル紙幣の15兆ドル分は何ら価値の裏付けはない」とのことです。

 

 

 

さらに、同氏は「これから半年ないし1年以内に世界の金融システムは間違いなく崩壊する」と述べています。

 

 

 

実際のところ、半年ないし1年以内に世界の金融システムが崩壊するかどうかは分かりませんが、ひとつハッキリ言えるのは、ドル高を含め、昨今の相場は「おかしくなっている」ということです。

 

 

 

そして、この「おかしさ」が是正されないことには、世界の現状も良くならないだろうと思います。

 

 

 

ここで、前述の「米国が発行するドル紙幣の15兆ドル分は何ら価値の裏付けはない」という点について考えてみますと、米国は盤石(ばんじゃく)でないと考えられます。

 

 

 

米国が盤石でないと思われる、最近のニュース等をいくつか紹介します。

 

 

 

 

 

・米NAHB住宅市場指数という、NAHB(米住宅建設業者協会)が毎月発表する、米国の不動産業者(住宅建設業者)の景況感を示す経済指標が、9カ月連続で低下しており、過去最長の下げとなっている。

 

 

 

・米国の「住宅バブル」が指摘されて久しいが、「バブル研究」に関して「第一人者」として知られるジェレミー・グランサム氏は「住宅バブルは乗り切れない」と発言した。

 

 

 

・コンサルティング会社PwC(プライスウォーターハウスクーパース)が、様々な業界の700人余りの米国の経営幹部と取締役を対象に調査を実施したところ、回答者の50%が「人員削減」を実施もしくは計画しているほか、52%が「採用凍結」を実施・計画していることが分かった。

 

 

 

・米国で従業員によるストライキが急増しており、2022年はこれまでに前年同期比で8割増となる270件超のストライキが発生した。

 

 

 

・米国の銀行の預金が減少しており、四半期で過去最大の減少となった。

 

 

 

 

 

さて、上記のことだけでも、米国が盤石でないことが分かります。

 

 

 

そんな米国の「ドル一強」が、果たしていつまで続くのでしょうか?

 

 

 

そのような中、先週木曜日、日本政府は急速な円安を阻止するため「為替介入」に踏み切りました。

24年ぶりの円買い・ドル売りの為替介入で、「1ドル=145.90円」から「1ドル=140.34円」と、一気に円高に振れましたが、今なお「異常な円安水準」であることには変わりありません。

 

 

 

 

今後も間違いなく想定される「乱高下」に、十分注意を払って取り組んでいきましょう。