円の適正価格

 

 

 

円安が止まりませんが、今後の為替相場を考えるにあたって、「20年前」の黒田日銀総裁の発言を振り返ってみたいと思います。(財務省財務官時代)

 

 

 

その発言は、海外の格付け機関大手3社(S&P、ムーディーズ、フィッチ)に対する「抗議」です。

当時、アフリカ南部の内陸部に位置する「ボツワナ共和国」と「日本」の国債が、海外の格付け機関大手3社によって、なんと「同じ格付け」にされたからです。

以下が、その発言です。

 

 

 

 

 

「日本国債の格付けは強固なファンダメンタルズを考えると低過ぎである」

 

 

 

「今後さらなる格下げには根拠がない」

 

 

 

「海外の格付け機関には客観的基準がない」

 

 

 

「格付けの信頼性に大きな問題がある」

 

 

 

「格付けというものは財政状態のみならず、経済全体の文脈、とくに経済のファンダメンタルズを考慮して総合的に判断されるべきだ」

 

 

 

「日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」

 

 

 

「マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国である」

 

 

 

「日本国債はほとんど国内で、極めて低金利で安定的に消化されている」

 

 

 

「日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高である」

 

 

 

1人当たりのGDPが日本の3分の1しかなく、かつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国があるが、どういうことなのか?」

 

 

 

「ポンド危機やIMF借り入れのわずか2年後に発行された英国債や、相変わらずの双子の赤字が続く米国債がトリプルAの格付けを維持しているのは、どういうことなのか?」

 

 

 

「日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同じ格付けとなるが、それはどういうことなのか?」

 

 

 

 

 

さて、当時の黒田総裁(財務省財務官時代)の発言は、極めて「まとも」と言えるでしょう。

そして同時に、日本の「健全さ」も伝わってくる発言です。

 

 

 

ところが、今やそんな黒田総裁が「円安総裁」となって、ひたすら「円」を「円安」へと誘導しています。(先週は1ドル=136.71円まで円が下落した)

 

 

 

結果、日本円の総合的な実力を示す「実質実効為替レート」は50年ぶりの円安水準ですし、中国、韓国、タイ、ブラジルといった国々の通貨よりも安くなっています。

 

 

 

前述の「20年前」の黒田総裁の発言を振り返りますと、現在の黒田総裁が、なぜひたすら「円安」へと誘導し続けるのか理解に苦しみますが、いくつかの「説得力のある説」も存在します。

 

 

 

ただし、ここでは「それらの説」は横に置いておいて、現在の「円安」が、あまりにも「異常」であることについて考えてみます。

 

 

 

それは、購買力平価説、つまり世界各国のマクドナルドで販売されているビッグマック1個の価格を比較する「ビッグマック指数」に注目すれば明らかです。

 

 

 

ちなみに、日本のビッグマックは390円、米国のビッグマックは5.81ドルです。

 

 

 

390円÷5.81ドル=67.12/ドル

 

 

 

 

 

上記の計算からも分かるように、「1ドル=67.12円」であれば、日本と米国のビッグマックの価格が同じになります。

 

 

 

つまり、本来は「1ドル=67.12円」でバランスが取れるということです。

しかし、現実は1ドル=135.19円」(円の価値が半分、625日時点)になっているわけですから、これは、あまりにも「異常」だと言えます。

 

 

 

このようになったのは、「経済的理由」ではなく「政治的理由」でしょう。

 

 

 

ただし、たとえ「政治的理由」だとしても、20年前に「ボツワナ共和国」と「日本」の国債が「同じ格付け」にされたように、誰が聞いても「おかしい」と感じるような、つまり異常な値動きが継続したことによって、現在の「1ドル=135.19円」になっているのです。

これは、多くの専門家が「円は売られ過ぎだ」と言っていることからも明らかですし、直近のニュースでも、米金融大手バンク・オブ・アメリカが【円の適正価格は90.74円だ】と示しています。

 

 

 

要するに、政治的理由とマネーゲームの両輪で、今の極端な円安になったということなのです。

では、この「極端な円安」は、いつ終焉を迎えるのでしょうか?

 

 

 

【円安反転のにおい嗅ぎつけ、日銀に逆らう投資家】

 

 

 

 

 

上記はウォール・ストリート・ジャーナルの記事ですが、最近は「円安反転」と考え、円高を見込む投資家達も増えてきているようです。

 

 

 

【個人投資家がついに降参、弱気相場に屈し大規模売却-JPモルガン】

 

 

 

 

 

この記事はブルームバーグの記事ですが、株式相場についても、弱気の見方が台頭してきているようです。

 

 

 

つまり、今後の相場は「円高」になっても「株安」になっても全く不思議ではありませんが、前述のように「政治的理由とマネーゲームの両輪」で動いているのが近年の相場の特徴ですから、どこまでいっても「リスク管理」には気を付けて取り組むべきだと思います。

 

 

 

20年前、海外の格付け機関によって「ボツワナ共和国」と「日本」の国債が「同じ格付け」にされましたが、今の相場もそんな「海外(外国人投資家)主導の展開」と言われています。

 

 

 

 

したがって、今後も「おかしな展開」はあると考えられるため、慎重に取り組んでいきましょう。