今回は、最近のニュースで度々報じられている「SMBC日興証券の相場操縦事件」に焦点を当て、様々なことを考察してみたいと思います。
さて、そもそもですが、事件は金融業界の「利益至上主義」に原因があると言われています。
一年前にも、2兆2000億円のヘッジファンド「アルケゴス・キャピタル」が破綻し、そこに野村證券、三菱UFJ証券、みずほフィナンシャルグループ、ドイツ銀行、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの大手金融機関が資金を出していたというニュースがありましたが、これも「利益至上主義」が招いた結果でした。
なぜなら、当時「アルケゴス・キャピタル」を率いていたのは、韓国系米国人投資家のビル・フアン氏でしたが、同氏はかつてインサイダー取引で有罪になったことがあり、取引要注意人物としてブラックリストに載っていたからです。
コンプライアンス(法令遵守)が機能していなかったと言わざるを得ないでしょう。
「利益至上主義」といえば、他にも、米国では「空箱上場」と言って、SPAC(特別買収目的会社)が資金を集め、問題のある企業でも「上場させる」ことを可能とする仕組みが横行しています。
例えば、ソフトバンクグループが出資する米シェアオフィス大手「ウィーワーク」は、一昨年3480億円もの損失を出した会社でしたが、赤字を脱却できないまま、昨年10月21日に上場しました。
そして、ある意味「当然」ですが、上場後は同社の株価は大きく下落し、つい最近も【ソフトバンクG出資の米ウィーワーク、経営陣巡る不確実性浮上】等と報じられていました。
このような「空箱上場」が横行するのも、「利益至上主義」に原因があることは間違いないでしょう。
さて、SMBC日興証券の相場操縦事件に限らず、以下のようなことも、過去に大きな「事件」となったことがあります。
・損失補填
・飛ばし
・インサイダー取引
「損失補填」とは、証券会社などの金融商品取引業者が、株式、債券など有価証券の売買で生じた顧客の損失の全部または一部を穴埋めすることで、これは「禁止行為」となっています。
「飛ばし」とは、簡単に言うと「粉飾決算」の一種なのですが、有価証券の「含み損」がバランスシート(貸借対照表)に記載されることを嫌う企業が、決算期の異なる企業を相手に、時価より高い値段で売却することです。
その後、売却した有価証券を再度引き取るわけですが、企業のバランスシート(貸借対照表)そのものが「歪んで」しまうため、これも「禁止行為」となっています。
「インサイダー取引」とは、上場会社の役職員等の会社関係者が、その特別な立場を利用して会社の重要な内部情報を知り、その情報が公表される前にこの会社の株式等の売買を行うことをいいますが、やはりこれも「禁止行為」です。
ところで、相場操縦、損失補填、飛ばし、インサイダー取引がなぜ「禁止行為」かと言いますと、証券市場は「公平でなければならない」という大前提があるからです。
もしも「相場操縦」「損失補填」「飛ばし」「インサイダー取引」がまかり通るのなら、証券市場は「公平」とは言えなくなります。
しかし残念ながら、証券市場に限らず、為替市場、商品市場等、あらゆる市場が「公平」とは言い難いのが現実です。
なぜなら、いずれの市場も「相場操縦」=「相場不正操作」等の事件が、いつの時代も「ひっきりなし」に起こっているからです。
そんな金融業界の「利益至上主義」については、背景には以下のような「考え方」が蔓延(はびこ)っていると考えられます。
・勝てば官軍
・どんな「手」を使ってもOK
・バレなければOK
実際のところ、上記の「バレなければOK」については、今回のSMBC日興証券の相場操縦事件のように「バレ」て表面化するケースは「氷山の一角」ではないでしょうか。
ところで、今回のSMBC日興証券の相場操縦事件では、逮捕者が4人出ました。
その4人の逮捕者は、いずれも他社(ゴールドマン・サックス、UBS証券、ドイツ銀行、メリルリンチ)からの「移籍組」でした。
逮捕者の1人である山田容疑者は「失敗してもいいから挑戦してほしい。リスクを取ってほしい」が口癖だったそうで、かつて「SMBC日興証券を変革中」と題するブルームバーグの記事にも掲載されたことがあります。
そして山田容疑者が移籍してきてからは、SMBC日興証券の株式トレーディングの利益は「うなぎ上り」となったそうです。
ただし、そうは言っても、やはり「犯罪」はダメでしょう。
金融業界の「利益至上主義」が、いつの日か「お天道様が見てる」というように、クリーンな体質になることが望まれます。
しかし現実としては、当面も、市場は「公平でない」と考えておいた方が「確か」でしょう。
したがって、そのような中で相場に取り組むにあたっては、たとえ上がりそうでも「下がる」可能性についても考え、たとえ下がりそうでも「上がる」可能性についても考え、要するに、慎重に取り組むことが重要です。
特に最近は、ウクライナ情勢によって、相場は意味不明な「乱高下」も目立っています。
市場は「公平でない」を念頭に、慎重さを維持して取り組みましょう。