先日、機関投資家が選ぶ「為替アナリストランキング」で、4年連続で1位となったJPモルガン・チェース銀行の佐々木融(ささきとおる)氏が、「1ドル=100円割れは不可避」と述べました。
そして佐々木氏の見解では「早晩100円割れとなるような円高局面がいつ訪れてもおかしくない」「今後数年間の方向性を見据えても、90円台への円高の回帰が不可避」とのことでした。
ところで、近年の為替相場は「虫眼鏡相場」と言われるくらい日々の値動きが小さく、それでも止まらない株価の上昇につられてジリジリと円安に進んでいったわけですが、私達個人投資家は、そろそろ「円高」への転換に備えてもいいのではないでしょうか。
その「徴候」は、先週のニュースからも見られました。
・「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり!」
コロナ重症患者受け入れ病院(立川相互病院・東京都)、窓に掲げられた現場の悲鳴
・緊急事態宣言、5月31日まで延長方針 愛知、福岡も対象に
・日経平均終値518円高、2万9331円・・・世界の景気回復に期待
上記3つのニュースは、いずれも同じ「5月6日(木)」のニュースでした。
ニュースと株価が「ちぐはぐ」になっています。
また、5月9日(日)の日経新聞では【(コロナ禍で)生活困窮やストレス増大による治安の悪化が懸念される】と報じられており、やはりどう考えても、今の株高の「おかしさ」が際立っています。
さてここで、「こんな矛盾がいつまで続くのか?」と考えた時に、同じ日に報じられた上記3つのニュースは、これから円高に転換する「徴候」のように私には思えます。
すると、翌日の5月7日(金)には、以下のようなニュースが報じられました。
【資産価格に急落リスク FRB報告、投資過熱警戒】
「金融政策の世界の頂点」であるFRB(米連邦準備理事会)も、現状に警鐘を鳴らしたわけです。
FRBは、具体的には「株価が最高値の更新を続けていること」や「低格付けの社債金利が大きく低下していること」について言及していました。
では実際に、早晩「1ドル=100円割れ」が現実になると、他の通貨はどうなるのでしょうか?
ちなみに、直近で「1ドル=100円割れ」になったのは、2016年8月まで遡ります。
その時のドル円は「1ドル=99.54円」を付けています。
この時、他の通貨は以下のようになっていました。(※現在は5月8日時点)
1ユーロ=112.31円(現在は132.05円)
1ポンド=129.12円(現在は151.87円)
1豪ドル=76.06円(現在は85.14円)
1NZドル=72.20円(現在は79.03円)
1トルコリラ=33.38円(現在は13.17円)
1ユーロ=1.1045ドル(現在は1.2163ドル)
1ポンド=1.2865ドル(現在は1.3989ドル)
上記のように、現在と比較しますと、違いがハッキリと分かります。
そして「相場の鉄則」は、「上がり過ぎたものは下がる」「下がり過ぎたものは上がる」です。
すると、早晩「1ドル=100円割れ」が現実になると、上記からも分かるように、他通貨も円高に進むことが予想できます。(トルコリラ円を除く)
また、ユーロやポンドに対しては、円高だけでなく、ドル高にもなっていくと予想できます。
問題は「早晩」がいつなのかですが、世界3大投資家の1人であるウォーレン・バフェット氏は、彼の率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」の株主総会で、先日以下のような発言をしました。
・(急増する素人投資家達について)多くの人が「カジノ」にいる
・(シンデレラの物語を引き合いに出し)いつ時計が12時になり、すべてがカボチャとネズミに変わるのかは誰も教えてくれない
要するに、バフェット氏は現状及び相場急変のリスクについて、警鐘を鳴らしているわけです。
さてこのように、JPモルガン・チェース銀行の佐々木氏の予想、FRB(米連邦準備理事会)の警鐘、バフェット氏の警鐘、そしてコロナ禍での株高の「おかしさ」に目を向けますと、早晩は「そろそろ」だと想定し、株の暴落や円高・ドル高を念頭に置いて、相場に取り組むべきではないかと思います。
ところで現在、インドの新型コロナウイルスの「感染爆発」が「想像絶する深刻さ」だと報じられています。
そのような中、思わぬところに大打撃が出ており、それが「ウォール街」です。
なぜなら、ウォール街のバックオフィス機能は、インドに集中しているからです。
バックオフィスとは、事務・管理業務のことですが、事務・管理業務が滞ると、仕事が「回らなく」なってきます。
したがって、市場では今後、「ウォール街発」のリスクも懸念されているのです。
このような全体像をしっかりと認識し、今後は相場急変のリスクに十分注意を払いながら、取り組むべきだと思います。
引き続き頑張りましょう。