「灰色のサイ」と「ブラックスワン」について考えてみたいと思います。
いずれも金融用語になりますが、まず「灰色のサイ」とは、大問題に発展する可能性が高いにもかかわらず、軽視されているリスクのことです。
例えば、相場における今の「異常な」株高は、間違いなく「灰色のサイ」と言えるでしょう。
なぜなら、「コロナ以前」と「コロナ以後」と分けて考えた時に、株価は「コロナ以後」である「今」の方が高く、世界3大投資家の一人であるウォーレン・バフェット氏が用いている、株の割高、割安を判断する「バフェット指数」も、前代未聞の水準に達しているからです。
ちなみに、バフェット指数は「100」を超えると警戒水準とされ、リーマン・ショック時でさえ「116」であったのにもかかわらず、先日は前代未聞の「200」を突破しました。
そんなバフェット氏の率いる投資会社「バークシャー・ハサウェイ」の手元現金は、過去最高の1454億ドル(約15兆円8900万円)になったとのことで、先日ブルームバーグが報じていました。
バフェット氏は、今の「異常な」株高を警戒しているようです。
このように、今の「異常な」株高が示す「灰色のサイ」は、いつか大問題に発展するでしょう。
そして、それは株価の「大暴落」となるでしょう。
次に「ブラックスワン」ですが、これは、オーストラリアで黒い白鳥(ブラックスワン)が発見され、それまでの「白鳥は白いものしかいない」という常識を打ち破った出来事が由来となっており、全く予想外の出来事が発生すると、確率論や経験、常識が通用しないため、社会や市場に極めて大きな衝撃を与えるというものです。
したがって、予想することにあまり意味はないかもしれませんが、例えば、どこかの火山で爆発的な噴火が発生する、どこかで巨大地震が発生する、どこかで「9.11同時多発テロ」のようなテロが発生する・・・といったことが、今後の「ブラックスワン」になるかもしれません。
あるいは、どこかの大手金融機関が破綻することが「ブラックスワン」になるかもしれません。
そして、もしも「ブラックスワン」が現実になると、相場は「大荒れ」となるでしょう。
「灰色のサイ」と同様、株価は「大暴落」となるでしょう。
ところで、今はコロナ禍でも「前代未聞の株高」となるような時代です。
だからこそ、「灰色のサイ」も「ブラックスワン」も意識しておくべきです。
そのような中、今から3カ月前にも、これらについてのニュースがありました。
【習近平主席、「灰色のサイとブラックスワンに備えよ」と党に指示】
中国の習近平国家主席も、「灰色のサイ」と「ブラックスワン」について言及したようです。
ちなみに習近平国家主席は、上記の指示に際して「世界的に100年間にわたり前例のない大変化が起きている」「国際情勢は予測しにくく、周辺環境は複雑だ」と語ったそうです。
まさに今の世界は、習近平国家主席が語ったような状況にあります。
だからこそ、相場の世界においても警戒を怠ってはいけないと思います。
ちなみに、2008年のリーマン・ショックは、ごく一部の専門家は事前に警鐘を鳴らしていたものの、多くの投資家にとっては「ブラックスワン」でした。
そんなリーマン・ショックにおいて、当時の「為替相場」は秋から年末にかけて以下のように動きました。
ドル円 105.48円 ⇒ 91.89円(13.59円高)
ユーロ円 151.37円 ⇒ 127.78円(23.59円高)
ポンド円 190.41円 ⇒ 133.56円(56.85円高)
豪ドル円 86.51円 ⇒ 65.38円(21.13円高)
ユーロドル 1.4340ドル⇒ 1.3904ドル(0.0436ドル高)
ポンドドル 1.8387ドル⇒ 1.4351ドル(0.4036ドル高)
「円」が急騰し、次に「ドル」が急騰したわけです。
ところで、私はトランプ前大統領誕生以降、相場の世界が急激に「おかしく」なったと認識しています。
また、多くの専門家も同様の指摘をしています。
そんな近年の「おかしな」相場は、振り返りますと、ひたすら株価が上がり続けました。
為替については「虫眼鏡相場」と言われるような小動きが続きながらも、株価に引っ張られる形で、じりじりと「円安」「ドル安」へと進みました。
したがって、いつか「灰色のサイ」や「ブラックスワン」が現実に「危機」を引き起こしますと、株価は暴落し、為替は「円」と「ドル」が急騰すると予想できるのです。
ちなみに、世界3大投資家の一人であるジム・ロジャーズ氏も「次の危機は史上最悪の危機になる。おそらく、株価は値下がりすることになる。50%、60%、70%、いやそれ以上だろう」と語っていますので、それこそ次の「危機」は「前代未聞」の大荒れ相場となるのではないでしょうか。
しかし問題は、「危機」の完璧なタイミングは「誰にも」分からないことです。
前述のバフェット氏も「明日、株価に何が起こるか分かりません」と言っていますが、やはり完璧なタイミングは、バフェット氏でさえ分からないわけです。
それでも、私達個人投資家は、「行動」は変えることができます。
「危機」が想定されるのであれば、保有する「ポジション量」を小さくするなどの「行動」は変えることができます。
特に、相場の世界では「アノマリー」と言って、「理由が明確ではない、値動きの経験則」というものがありますが、有名な「アノマリー」に「sell in may(セルインメイ、5月に売れ)」というものがあります。
「sell in may(セルインメイ、5月に売れ)」であれば、今月は特に注意すべきではないでしょうか。
引き続き、慎重に根気強く頑張っていきましょう。