金融経済用語に「炭鉱のカナリア」という用語があります。
これはその昔、炭鉱労働者がカナリアを籠にいれて坑道に入ったことに由来します。
カナリアは人間よりも先に有毒ガスを察知して鳴き声(さえずり)が止むことから、金融経済用語としては「何らかの危険が迫っていることを知らせてくれる前兆」を「炭鉱のカナリア」と言います。
さて先日、一部の専門家が「炭鉱のカナリア」と指摘するようなニュースが報じられました。
【米ファンド損失が世界に 野村やクレディなど業績波及、金融当局緊急招集】
上記のようなニュースが多数のメディアで報じられたのですが、一部の専門家は「炭鉱のカナリア」と指摘しており、その簡単な概要を以下に整理してみたいと思います。
・2兆2000億円のヘッジファンドが破綻した
・アルケゴス・キャピタルを率いるのは、韓国系米国人投資家のビル・フアン氏
・ビル・フアン氏は、かつてインサイダー取引で有罪になったことがあり、取引要注意人物としてブラックリストに載っていた
・ビル・フアン氏が率いるアルケゴス・キャピタルに資金を提供していたのが、野村證券、三菱UFJ証券、みずほフィナンシャルグループ、ドイツ銀行、クレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなどの大手金融機関だった
・野村証券を傘下に持つ野村ホールディングスは、この件で2200億円の損失を出し、株価が16.3%下落した
簡単に説明しますと上記のような内容だったわけですが、、一部の専門家はこの件について「炭鉱のカナリア」と指摘し、「第二のリーマン・ショック」に繋がるのではないかと言っています。
なぜなら、リーマン・ショック前も「ほとんどの投資家が楽観的だったから」ということのようです。
また、アルケゴス・キャピタル以外にも「似たような状況のヘッジファンドは、まだまだ存在するのではないか?」と言っています。
そのようなことから、「第二のリーマン・ショックに繋がってもおかしくない」というわけです。
ちなみに余談ですが、今回の件で、アルケゴス・キャピタルを率いるビル・フアン氏の写真が出回りました。
私は、ビル・フアン氏の写真を見て、グリコ・森永事件の「キツネ目の男」にどことなく似ているなと思いました。
いずれにせよ、今回の件は「取引要注意人物としてブラックリストにまで載っているビル・フアン氏に多額の資金を出した大手金融機関のコンプライアンス(法令遵守)はどうなっているのか?」と思わずにはいられません。
そしてコンプライアンス(法令遵守)といえば、最近は米国でブームになっている「空箱上場」が特に問題視されています。
「空箱上場」とは、企業買収のみを目的とした「空箱」の上場のことで、SPAC(特別買収目的会社)が資金を集め、問題のある企業でも「上場させる」ことを可能とするものです。
問題のある企業といえば、ソフトバンクグループが出資する米シェアオフィス大手「ウィーワーク」の名前が挙がっていますが、ウィーワークは昨年3480億円もの損失を出した会社です。
それが「空箱上場」によって、近く上場すると発表されたのです。
さすがに「こんなデタラメを許しておいていいのか?」と、多くの専門家が声を上げています。
さてこのように、まるで昨今の金融市場は「デタラメがデフォルト(基準)」になっているかのようです。
相場の値動きも「デタラメがデフォルト(基準)」になっているかのようです。
分かりやすい例としては、コロナ禍での株価上昇など、実体経済との乖離が目立っています。
したがって、私達投資家は「デタラメがデフォルト(基準)」になっていることを認識した上で、今の相場に向き合う必要があります。
それこそ、もしも今後先々、前述の「第二のリーマン・ショック」でも起これば、この流れも大幅に修正されることになるのでしょうが、そうならない限りは、当面「デタラメがデフォルト(基準)」が続くように思います。
ですので、今後の「投資戦略」としては、以下の「どちらか」を採用するのが現実的だと思います。
・現在の「異常」な相場の流れに乗る一方、「第二のリーマン・ショック」に備えて、投資可能額の10分の1程度で投資する。
・あくまで「第二のリーマン・ショック」を想定し、忍耐強く、株の暴落、円高・ドル高、金高・銀高の相場観を持って取り組む。
ちなみに、現在は「100」を超えると警戒水準とされるバフェット指数は「197」となっています。(リーマン・ショック時でさえ「116」です)
くれぐれも慎重に、そして忍耐強く取り組んでいきましょう。