マイナス価格

2016年11月8日、アメリカで大統領選挙が実施され、トランプ大統領が誕生して以降、私は「相場の世界が、筆舌に尽くし難いほどおかしくなってしまった」と思っています。

 

 

業績の大幅悪化に逆行して過去最高値更新を繰り返した株価、株価に影響されて不可解な値動きを繰り返した為替、需給を無視して下落した「金」や「銀」・・・

 

 

上記のように、今日までの「おかしさ」を挙げればキリがないほどたくさんあるのですが、まさに「筆舌に尽くし難いほどおかしい」という感じでした。

 

 

またそれだけではなく、「おかしさ」を通り超えて、もはや「犯罪ではないか?」と思ったことも何度もありました。

 

 

実際、先週も「欧米大手銀行10行が社債市場の不正操作で投資家から提訴された」というニュースが報じられたところであり、もはや相場全般において「不正操作」は日常になっていると思います。

 

 

そのような中、原油市場で「神」と呼ばれていたトレーダー、アンディ・ホール氏は、2017年8月に自身のファンドを閉鎖しました。

 

閉鎖理由は、近年の相場が「需要と供給」といった経済の「基本」を無視した値動きばかりするから、ずっとコンピューター(AI)によって翻弄され、不可解な値動きを続けているから、ということでした。

 

 

そして遂に先週、そのような「筆舌に尽くしがたいほどおかしい値動き」の究極の姿を原油市場に見ることとなりました。

 

 

「1バレル=18.27ドル」で推移していたNYMEX(ニューヨーク商業取引所)の原油先物5月限が、なんとそこから「58.59ドル」下落し、一時「-40.32ドル」に、そして最後は「-37.63ドル」で引けたのでした。

 

史上初の「マイナス価格」であり、前代未聞の「珍事」と報じられました。

 

 

ところで「-37.63ドル」とは、いったいどういうことなのでしょうか?

 

 

例えば粗大ごみを出す場合、法律に基づいて料金を払って回収してもらうことになりますが、それと同じような意味だということです。

 

 

「原油=粗大ごみ」になってしまったということであり、原油の「置き場所」がない、ということなのです。

 

逆に買い手から見ますと、原油を入手したうえに、お金までもらえるという話なのです。

 

 

しかし原油は、世界のエネルギー資源の根幹を担う必需品です。

 

だからこそ歴史を振り返りましても、その利権争い、紛争・戦争が世界各地で繰り返し起きてきたわけです。

 

 

今回の原油の「マイナス価格」について、報道では、コロナウイルス感染拡大を防ぐための移動・外出規制によって航空機や自動車による人の移動が止まり、エネルギー需要が世界で吹き飛んだからだ、貯蔵タンクやパイプラインが満杯に近づき、海上のタンカーを含めて原油を保管する料金が跳ね上がっていたからだ・・・と説明されていましたが、それにしても「マイナス価格」とは極めて異常です。

 

 

この件についても、不正操作の可能性を含めて、しっかりと調査する必要があると思います。

 

 

しかしそのような中でも、今後改めて魅力が増してくると思われるのが「金」や「銀」です。

 

 

今回の原油と違って「置き場所がない」ということがありませんし、有史以来採掘された金の総量が50メートル水泳プール約4杯分、銀で約20杯分ですから、普通にタンカーで運べる範囲です。

 

 

さらに紙幣と違って、刷って増やすことができないのが「金」や「銀」ですから、今回のコロナ危機で世界の財政赤字が2.7倍に膨らむと報じられている中で、今後はさらに希少価値が認められてくるのではないかと思います。

 

 

実際、先日、米大手銀行バンク・オブ・アメリカも、今後18か月の金価格予測を3000ドルに引き上げました(過去最高値は1920.8ドル)。

 

 

一方、今回の異常な原油の値動きに比べて、「いたって平穏な動き」「寝ているようなもの」と言われたのが為替相場です。

 

 

たしかに最近の為替相場はあまり動かなくなってきました。

 

 

しかし、例えばリーマン・ショック以降ですと、ドル円は「75.32円~125.85円」など、「ある一定の範囲で動く」ことが予想できるのが為替相場です。

 

 

したがって、前述の「筆舌に尽くし難いほどおかしな値動き」で損切りになるのを避けるためにも、「ある一定の範囲の値動き」を普段から意識しつつ、ポジション量を逆算し、「いざという時に対処できる」「負けなければ勝つ」「時間を味方につけて勝つ」というスタンスで取り組むのがよいだろうと思います。

 

 

また、今は新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界各国が「非常事態」です。

 

 

この「非常事態」において、相場では「リスク回避で買われた」と報道されるのは、決まって「円」や「ドル」、そして「金」です。

 

 

昔から「有事の円」「有事のドル」「有事の金」と言われていますが、その通りとなっています。

 

 

しかし昨今の「おかしな値動き」を考えますと、今後の「円」「ドル」「金」も一本調子ではいかないだろうと思います。

 

 

ただしそれでも、「円」「ドル」「金」が安くなった時は「買いのチャンス」と意識しておきますと、長い目で見た時には結果が違ってくると思います。

 

 

このような全体像を意識して、取り組むのがよいと思います。

 

 

引き続き頑張りましょう。