イギリス

 

昨年11月のコラムでお伝えしたのですが、「おさらい」も兼ねて、再度今の「イギリス」について考えてみたいと思います。

 

 

 

そもそもなぜブレグジット(イギリスのEU離脱)の話になっているのかというと、多くのイギリス国民が、移民が増え過ぎたことに対する不満を持っていたからです。

 

移民が増え過ぎたとは、すなわち人口が増え過ぎたという事で、人口が増え過ぎた結果どうなったかといいますと、仕事が無くなる、賃金が低下する、子供が急病になっても4時間待たされる病院、机が足りなくなってしまった学校、住宅不足から家賃が高騰、いつも満員の電車など、生活の質がどんどん低下していったわけです。

 

 

 

このような不満を受けて、2016年にEU離脱の是非を問う国民投票が行われ、結果としてブレグジットが決まりました。

 

「移民の受け入れ」に国民が「NO」を示した形です。

 

あとは、「いつどのように離脱するか?」ということになっています。

 

 

 

ちなみに、今はラグビーW杯が行われていますし、イギリスの地図も見るとイメージしやすいのですが、「イギリス」とはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域が合わさっての「イギリス」となります。

 

 

 

そしてイギリスで使われている通貨はポンドですが、北アイルランドとアイルランドとの間には国境があり、アイルランドはイギリスとは完全に別の国になります。

 

アイルランドの首都はダブリンで、通貨はユーロが使われています。

 

 

 

1998年の和平合意によって、イギリス(北アイルランド)とアイルランドとの間には検問所がなくなりました。

 

その結果、通商面などで大きなメリットをもたらしていたのですが、ブレグジットによって厳格な国境管理が復活しますと、検問所も復活する可能性が高いため、イギリス・アイルランド双方の意見が対立するようになっています。

 

 

 

実際問題としても、アイルランドからイギリス(北アイルランド)へ働きに出ている人も多いですし、イギリス(北アイルランド)とアイルランドの間は配送トラックが1日の間に何度も往復しているという現状があります。

 

 

 

したがって、この「国境問題をどうするのか?」というのが重要なポイントになっています。

 

 

 

ここで、先日出てきた新たなEU離脱案が北アイルランドを「経済特区」とする内容です。

 

しかし、これにイギリス国内(北アイルランド)のDUP(民主統一党)が反対しているという構図があるのです。

 

 

 

ちなみに、ここで押さえておきたいもう一つの重要なポイントが、イギリスの4つの地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)それぞれで、独立を主張する動きもあるということです。

 

 

 

これらのことからも分かるように、同じ「国」でも日本とイギリスではかなり「事情」が異なっているわけです。

 

 

 

さらに、以下も押さえておきたい重要なポイントです。

 

 

 

 

 

・ジョンソン首相は10月末のEU離脱を絶対的な公約に掲げ、「生きるか死ぬかだ」「何があろうと離脱だ」と繰り返してきた

 

 

 

・ジョンソン首相は国内の法律に従ってEUに離脱延期を要請する書簡を送ったが、自らの署名は拒否した

 

 

 

・「EUは離脱延期承認の見通し」と報じられたが、フランスのマクロン大統領は「延期を認めない」と発言した

 

 

 

 

 

さて簡単にポイントを整理してみましたが、イギリスを一言で言うと、「混乱を続ける国」と言えます。

 

前述のように、国民には移民に対する不満があるわけですし、4つの地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)それぞれで、独立を主張する動きもあります。

 

国内が全然まとまっていないわけです。

 

 

 

はたして、このようなイギリスに解決策があるのでしょうか?

 

 

 

実際のところ、アメリカの格付け会社ムーディーズは、先週以下のように述べました。

 

 

 

 

 

「イギリスのEU離脱時期や最終的な結論を巡って著しい不透明感があり、明らかにクレジットネガティブ(マイナスの方向で見ているということ)」

 

 

 

 

 

では相場ですが、EU離脱の是非を問う国民投票が行われ、結果としてブレグジットが決まった「2016623日」にどう動いたのか、以下に整理をしてみたいと思います。

 

 

 

 

 

・ドル円(106.79円 → 98.89円)

 

 

 

・ユーロ円(121.96円 → 109.52円)

 

 

 

・ポンド円(160.07円 → 133.18円)

 

 

 

・ポンドドル(1.5016ドル → 1.3222ドル)

 

 

 

 

 

これが、2016623日に「一日」で起こった値動きです。

 

「尋常ではなかった」ことが分かると思います。

 

 

 

そして、このような値動きの「第二弾」がいつ起こってもおかしくないのが今のイギリス問題です。

 

 

 

先々週のコラムでもお伝えしましたが、現在イギリスの金融機関はもちろんのこと、他の国々の金融機関でも行員の「休暇取得」が禁じられ、臨戦態勢を取ることを命じられていると報道されています。

 

「第二弾」があるかもしれないからです。

 

 

 

このような中、今後も色々な報道があると予想されますが、「混乱を続ける国」「解決策があるのか?」という観点に立てば、決して楽観できないと思います。

 

 

 

つまり当面は「リスクオフ」で、相場観としては、株安、円高、ドル高、金・銀高をイメージしておく方が賢明だと思います。

 

 

 

これらの話をひとつ参考にしていただけたら幸いです。