情報格差

 

「情報格差」をテーマに考えてみたいと思います。

 

 

 

少し前に日本経済新聞で取り上げられていたのですが、現在欧米ではファンドなどの運用担当者の8割が「代替データ」を活用しています。

 

 

 

「代替データ」とは従来の経済指標(GDP、雇用統計、貿易収支、小売売上高など)や企業決算とは異なる情報(データ)で、スマホ位置情報やクレジットカード情報など様々なものがあります。

 

 

 

ちなみに国連の報告書によると、現在世界の人口は77億人だそうです。

 

 

 

そのような中、現在世界の人口の半分以上がスマホを持っていると言われています。

 

スマホには様々なアプリがあり、それらアプリから得られる「位置情報」があります。

 

 

 

そんな「位置情報」を集め、提供(販売)している会社もあります。

 

例えば、アメリカの調査会社「タソスグループ」です。

 

 

 

2018年の秋、アメリカの電気自動車メーカー「テスラ」は生産不調や経営危機がささやかれていました。

 

しかしこの時に、複数のヘッジファンドが一斉にテスラ株を買いました。

 

なぜなのでしょうか?

 

 

 

これら複数のヘッジファンドは、前述の「タソスグループ」から「テスラ」の、スマホの「位置情報」を得ていたからです。

 

「テスラ」の動向を、カルフォルニア州にある同社工場の外と中を行き来するスマホの位置情報から把握していたのです。

 

例えば工場内に一定時間とどまっている位置情報が多ければ、それだけ働いている工場作業員が多いことが分かります。

 

夜間の位置情報が急増すれば、フル生産に入ったのではないかと予想することができます。

 

 

 

このような「位置情報」を得た結果、複数のヘッジファンドが一斉にテスラ株を買ったわけです。

 

そして、テスラ株は5割急騰しました。

 

 

 

またこのような「代替データ」の中には、経営者の「本心」というものもあります。

 

AI企業「ファクトスクエアード」はアメリカ企業経営者ら3万人の音声データを解析し、言葉遣いなどから「本心」を見抜くそうです。

 

 

 

例えばウォルマートの電話会見に出席した経営幹部の発言にAIが反応し、顧客に「業績の先行きに自信がない」とのリポートを送り、株価下落を的中させたこともあったそうです。

 

 

 

このような各種の「代替データ」は、価格が1000万円を超すものや1億円を超すものもあるそうですが、引き合いは急増しており、ファンドが競って購入しているようです。

 

それもこれも、「代替データ」に費やす金額以上の「売買利益」が見込めるからでしょう。

 

 

 

しかしこのような状況を考えますと、データ収集に大きな金額を費やすことのできるヘッジファンドや機関投資家の方が個人投資家よりも「有利」だと言えます。

 

 

 

そして残念ながら、このような構図は昔から変わっていません。

 

アメリカの調査会社「メドレー・グローバル・アドバイザーズ」は、投資家の間ではよく知られているのですが、米政権内部やFRB(米連邦準備制度理事会)と密接に繋がっていると言われ、資金力のあるヘッジファンドや機関投資家はメドレー社に大きな金額を支払って、レポートを購入しているという背景も昔から知られています。

 

 

 

また、2011年にはスイス国立銀行(中央銀行、SNB)のヒルデブラント総裁の妻だったカシュア夫人が50万ドルのドル買いを行い、インサイダー取引だと疑われた、といったこともありました。

 

 

 

これらのことから分かるのは、情報は決して「フェア」ではないということです。

 

情報については「持つ者」「持たざる者」といった構図があり、「持たざる者」は常に一般の個人投資家なのです。

 

 

 

したがって、以前からこのような「情報格差」に関する「規制強化」はずっと叫ばれているのですが、そう簡単に状況は変わりそうにありません。

 

 

 

「では、どうすべきなのか?」といったときに、「個人投資家が情報面で不利になっていることを自覚した上で、どう戦うか?」といった思考が必要だと思います。

 

 

 

そのような中、先週ブルームバーグが【上げ下げ繰り返すトランプ相場、結局は約2年前からほぼ変わらず】と報じていました。

 

さらに、トランプ相場が「ツール・ド・フランス」に例えられていました。

 

「ツール・ド・フランス」とは毎年7月に23日間の日程で行われる自転車ロードレースのことで、距離にして3300km前後、高低差2000m以上という起伏に富んだコースを走り抜くものです。

 

 

 

「大きな上りに大きな下り、それに恐ろしいほどの下り。そして次のピークまで上がったら、また下がることになる」といった「ツール・ド・フランス」と「トランプ相場」が似ているというわけです。

 

 

 

しかしこれは見方を変えれば、「時間さえかければ、どこかで利益確定のチャンスはやってくる」と考えることもできます。

 

報道でも「結局は約2年前からほぼ変わらず」となっている通り、上げ下げ繰り返しながらも、元に戻っていく相場が続いています。

 

 

 

一方で実際のところ、金融機関等で働く多くのプロ投資家達は「個人投資家は時間の制約がないから、うらやましい」と言っているものです。

 

彼らは「もう少し待てば利益になるはず」と思っていても、期末がきてしまい、強制的に損失扱いになってしまったというような経験を何度もしているからです。

 

 

 

したがって前述のように、個人投資家が情報面で不利になっていることを自覚した上で、今のトランプ相場の傾向も加味して考えますと、個人投資家としては「時間を味方につけて勝つ」という戦略が最も現実的な対応策になるのではないかと思います。

 

 

 

このようなことを意識して、引き続き頑張っていきましょう。