意味理解

 

AI主導の相場が続いています。

 

これまでに何度かお伝えしてきたように、米金融大手のゴールドマン・サックスで、2000年当時に600人いたニューヨーク本社のトレーダーが現在は2人になっており、他はすべてAIに置き換わりましたが、その一方で、現在はゴールドマン・サックスに勤める約4万人の社員の内、約1万人がエンジニアになっているそうです。

 

ゴールドマン・サックスはAIを非常に重視しているという事です。

 

また日本経済新聞が報じるところでは、「機関投資家の7割がAIの活用に前向き」との事です。

 

 

 

AIについては、「数式モデルを組み合わせる」「ニュースのキーワードに反応する」「テクニカル分析を駆使する」「10億分の1秒の超高速で売買する」・・・と、様々なものが存在します。

 

そして、これらの様々なAIが「AIAI」となって、売買を繰り広げています。

 

最近の相場はまるで固定相場のようにほとんど動かない展開が続いていますが、「売りたい勢力」と「買いたい勢力」が拮抗しているのだと思います。

 

 

 

そのような中、欧州では最近、「政治をAIに任せた方がいいのではないか?」という声が大きくなっているそうです。

 

ノルウェーでは、「国家がとるべき政策の選択肢の評価をAIに任せる」という新たな試みがスタートし、世界の注目を集めています。

 

AIに政策のプラスとマイナスを客観的に評価してもらい、国家にとって公正な判断をさせようという試みだそうです。

 

果たしてうまくいくかどうか、注目です。

 

 

 

AIについての入門書としては、東京大学大学院工学系研究科の准教授である松尾豊氏の「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの 」(角川EPUB選書)が非常に高い評価を受けています。

 

そしてその松尾氏が、「すでに実現されている技術」「もしかしたら実現されるかもしれない技術」が綿密に織り込まれている小説だと評価したのが「オリジン」(角川文庫)です。

 

 

 

「オリジン」は「起源」という意味になりますが、この小説のテーマは、人類にとって最も根源的な「われわれはどこから来たのか。そして、どこへ行くのか」という二つの問いを人工知能の助けを借りながら迫る、というものです。

 

 

 

「オリジン」は、44言語に翻訳され7000万部の大ベストセラーとなり、映画化もされた「ダ・ヴィンチ・コード」を超えたと言われています。

 

「オリジン」の作者は「ダ・ヴィンチ・コード」と同じで、ダン・ブラウンです。

 

 

 

私も最近読みましたが、非常に面白い小説だと思いました。

 

前述の松尾氏は「作者がすさまじい量と質の取材をしたであろうことが分かる」「未来社会を考える技術書としてもお勧めしたい」と述べました。

 

ご興味ある方は、ぜひ読んでみてください。

 

 

 

しかし松尾氏は言います。

 

「完全に意味理解のできるAIは、現時点では不可能で、意味理解をどうやって実現するかは、急速に研究が進展しているものの、いまだ実現されていない」と。

 

 

 

そして私達「人間の」投資家がAIに対抗するヒントもここにあります。

 

「意味理解」です。

 

 

 

AIAI」については、私は方々から話を聞いているのですが、いわゆる「上手くいくやり方」の賞味期限がどんどん短くなっている、と皆一様に言います。

 

また、「膨大な数式や情報を処理させた結果、AIがどんな理由で買ったのか、あるいは売ったのか、人間が理解できないケースが出てきている」という話も聞きます。

 

その結果、AIを駆使していた投資家達の中には「AIに勝つにはAIを無視する」という結論に達する人達もたくさん出てきています。

 

 

 

これはAIにはできない「意味理解」、つまり為替の場合ですと、国の経済状態がどうなのか、国家を取り巻く環境がどうなのか、といったような事にしっかり向き合う基本に戻ろうという意味です。

 

この原点回帰こそが「AIに勝つにはAIを無視する」に繋がります。

 

 

 

そのような中、前のコラムでもお伝えしましたが、同じゴールドマン・サックスでも、人間のストラテジスト(投資戦略を考える専門家)は次の金融危機を想定し、周囲の人達に「ドル円がどこまで行くと思うか」と尋ね、「次の危機時には1ドル=60円」という予想を出しています。

 

もちろんこの予想の背景には、国の経済状態がどうなのか、国家を取り巻く環境がどうなのか、といったような「意味理解」があるわけです。

 

 

 

また野村総合研究所の大崎貞和氏も、このような「意味理解」を踏まえての事だと思いますが、「人間は長期運用に、AIは短期運用にと、役割をすみ分けるようになるだろう」と語っています。

 

 

 

今後もいわゆる「不可解な値動き」はあると思いますが、私達は常に「意味理解」を意識して、AIに翻弄されないようにしなければならないと思います。

 

 

 

引き続き頑張りましょう。