ブレグジット

 

ブレグジット(イギリスのEU離脱)に関する報道で、ポンドが乱高下しています。

 

焦点は「ソフトブレグジット」「ハードブレグジット」「合意なきブレグジット」のいずれか、つまりどのような形での離脱になるのかというところにあります。

 

 

 

そもそもなぜ「ブレグジット」という話になっているのかというと、過去コラムでも背景を説明させていただきましたが、多くのイギリス国民が、移民が増え過ぎたことに対する不満を持っていたからです。

 

移民が増え過ぎたとは、すなわち人口が増え過ぎたという事で、人口が増え過ぎた結果どうなったかと言いますと、仕事が無くなる、賃金が低下する、子供が急病になっても4時間待たされる病院、机が足りなくなってしまった学校、住宅不足から家賃が高騰、いつも満員の電車など、生活の質がどんどん低下していったわけです。

 

 

 

このような不満を受けて、2016年にEU離脱の是非を問う国民投票が行われ、結果としてブレグジットが決まりました。

 

「移民の受け入れ」に国民が「NO」を示した形です。

 

 

 

ところで私達は「イギリス」と言いますが、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの地域が合わさっての「イギリス」となります。

 

 

 

例えばサッカーFIFAワールドカップに「イギリス代表」は参加しておらず、イングランド、スコットランド、北アイルランドの代表が別々に出場しています。

 

ラグビーの国際試合についても同様で、「イギリス代表」は参加しておらず、イングランド、スコットランド、ウェールズの代表が別々に出場しています。

 

 

 

またイギリスの地図を見ると分かりやすいのですが、北アイルランドとアイルランドとの間には国境があり、アイルランドは完全に別の国になります。

 

アイルランドの首都はダブリンで、通貨はユーロが使われています。

 

 

 

1998年の和平合意によって、イギリス(北アイルランド)とアイルランドとの間には検問所がなくなりました。

 

その結果、通商面などで大きなメリットをもたらしていたのですが、ブレグジットによって厳格な国境管理が復活しますと、検問所も復活する可能性が高いため、イギリス・アイルランド双方の意見が対立するようになっています。

 

 

 

このように、同じ「国」といっても、日本とイギリスとでは「事情」がかなり異なっています。

 

そしてイギリスには上記のような「事情」があるからこそ、ブレグジットが複雑で困難な問題になっているのです。

 

 

 

冒頭で述べたように、問題はどのような形での離脱になるのかという事ですが、イギリス国内の意見もまとまらなければ、EUとの議論も空回りしているのが現状です。

 

イギリスがEUを離脱し、EUの基本理念である「人の移動の自由」を拒むのであれば、EUとしてはイギリスからの輸出品に高関税をかけるなど、厳しい対応を取らざるを得ません。

 

このように、問題が一筋縄ではいかなくなっているのです。

 

 

 

 

 

ここで先週のポンド関連のニュースについて、時系列で振り返ってみたいと思います。

 

 

 

・ポンドが1%安、EU離脱巡る合意遠のくー1.20ドルもとMUFG (1112日)

 

 

 

・ロンドン外為13日 ポンド一段高 EU離脱交渉の進展期待 (1113日)

 

 

 

・ポンド上昇、英閣僚が離脱協定案を了承 (1114日)

 

 

 

・ポンドが今年最大の下げ、英EU離脱巡り緊張 (1115日)

 

 

 

・ポンドに売り圧力、EU離脱迷走を警戒 (1116日)

 

 

 

 

 

上記のように、離脱に関するニュースに左右される形で、ポンドは乱高下を繰り返しました。

 

さらに今後も乱高下を繰り返すでしょう。

 

 

 

一方で「実際どうなのか?」といった時に、日本のパナソニックは欧州本社をイギリスからオランダへ移転させることを決め、世界の大手金融機関はイギリスから欧州大陸に続々と営業の拠点や資産の移動を進めており、ドイツには米大手金融機関だけで32兆円もの資産が移転されます。

 

つまり今後のイギリスについて、厳しい将来を予想しているという事なのです。

 

 

 

したがって、この先意識しておきたいのが、国民投票でブレグジットが決まった2016624日の値動きです。

 

当時、以下のような値動きとなりました。

 

 

 

ドル円:   高値106.79円 安値98.88円  高値と安値の差7.91

 

ユーロ円: 高値121.95円 安値109.52円 高値と安値の差12.43

 

ポンド円: 高値160.06円 安値133.16円 高値と安値の差26.90

 

 

 

これらが「わずか1日」の値動きです。

 

いかに凄まじい値動きだったかが分かると思います。

 

ちなみにこの時、株は暴落し、金や銀は暴騰しました。

 

 

 

今後もブレグジットに関する展開次第では、経済が大混乱に陥るとの見方が強まるなどして、上記のような値動きが再現される可能性があります。

 

 

 

そして今朝も「英首相、離脱巡るEU首脳会議控え、厳しい1週間に」といったニュースが入っています。

 

 

 

現在ブレグジットに関する注目が非常に高まっていますので、十分に注意をしながら取り組んでいきましょう。