貿易戦争

 

「貿易戦争」に関する報道に注目が集まっています。

 

アメリカが鉄鋼・アルミニウムの輸入制限を発動すれば、中国も一歩も引かない構えで報復関税を発動させています。

 

中国のネット上ではアメリカ製品不買運動の動きも起こっているようです。

 

 

 

JPモルガンのダイモンCEOは「米中の貿易戦争は世界経済にリスクだ」と語り、米共和党は「米中の貿易戦争は中間選挙に打撃がある」としてトランプ大統領に警告を発しています。

 

一方で中国は「いかなる犠牲も払う」「貿易戦争に勝つ」と強気姿勢です。

 

 

 

このような中、先週の米国株式市場は2日に一時605ドル安、3日は前日比389ドル高、4日は一時469ドル安となった後に反発して前日比230ドル高、5日は前日比240ドル高、6日は前日比572ドル安で終了しました。

 

貿易戦争への懸念が膨らめば株安が進み、貿易戦争に「交渉の余地がある」との見方が優勢になれば株高が進む、といった具合で、「貿易戦争」を意識した展開が続きました。

 

 

 

貿易戦争が今後さらに激化するのか緩和するのか、現時点では何とも言えませんが、前者であればドル円は100円割れ、後者であればドル円は110円超えといった見方もあるようで、この問題は為替市場にも影響を与えます。

 

 

 

さて前回のコラムでは、世界が新たな冷戦時代に突入したという話をしましたが、私達投資家は「中国とロシアの経済関係の強化」について把握をしておくべきです。

 

しかしこれについて、日本ではほとんど報道がなされていません。

 

 

 

経済関係の強化という点においては、スワップライン(相互為替協定)について知っておく必要があります。

 

スワップラインとは、各国の中央銀行が互いに協定を結び、もしもの経済危機・通貨危機の際には、協定相手国へ通貨を融通し合うことを定めたものです。

 

 

 

例えば中国とロシアには「元・ルーブル」スワップラインがありますので、中国がロシアから食料を買い込んでそれを「元」で支払う、そしてもしもロシアが経済制裁を受けたとしても、その際は「元」を融通してもらいつつ、「元」を使ってロシアは中国からモノを買う事ができるという事になります。

 

 

 

これに関連した話として、今から34年前にロシアが穀物輸出を停止した事がありました。

 

当時、ロシアが経済危機に陥っていたにも関わらず、です。

 

普通であれば、ロシアは値下げをしてでも輸出をするところです。

 

しかし、中国とロシアには「元・ルーブル」スワップラインがあったので、ロシアは輸出停止に踏み切ることができたというわけです。

 

輸出停止にしても中国を頼りにできたからです。

 

それほどに、中国とロシアの経済関係の強化は進んでいるという事なのです。

 

 

 

これは逆もまた然りで、このように中国とロシアの経済関係の強化が進んでいる背景もあるからこそ、今回の貿易戦争に関して中国は強気でいられるのだと思います。

 

両国においては、貿易決済にドルを使用しないという事であり、自国通貨建てで貿易を始めたという事です。

 

お互いに「ルーブル」と「元」を受け取りますよ、という事です。

 

 

 

このように「新たな冷戦時代に突入した」と言われる中で、少なくとも中国やロシアは脱ドル化の流れに進んでいます。

 

貿易戦争が本格化すれば、世界の脱ドル化はさらに進むでしょう。

 

 

 

脱ドル化の流れは金(ゴールド)の高騰にも繋がるとみられており、金市場に40年携わっている専門家は「米中貿易戦争で金価格が天空まで高騰する」と語っています。

 

そして中国の投資家は、このような脱ドル化の将来を予想してか、金及び金ETF(投資信託)への投資を拡大させています。

 

 

 

今回の貿易戦争を巡っては、株式市場・為替市場・金市場と、あらゆる市場にも影響を与えると思われますし、今後の世界の行く末をも左右するでしょう。

 

今後の展開には要注目との認識を持って臨みましょう。