「未来は神のみぞ知る」と言いますが、物事には好不調の波がある事、好景気・不景気の波がある事などは普遍の真理だと思います。
そのような中、米金融大手のJPモルガン・チェースが「リセッションが近いと思えば円とドル、スイスフランとシンガポールドルを保有すべきだ」と指摘しました。
リセッションとは景気後退の事ですが、要するに、いざリセッションになれば円高、ドル高、スイスフラン高、シンガポールドル高になると指摘しているという事です。
個人的には、過去コラムで「ブレグジット(英国のEU離脱)のように、スイス版ブレグジットの懸念が強まってきている」と述べた通り、スイスの先行きに懸念を抱いていますので、スイスフラン高になる事にはクエスチョンマークが付くのですが、円高、ドル高、シンガポールドル高については全く同感です。
特に「円」については、ブルームバーグでも「34兆円運用会社(ラッセル・インベストメンツ)、円保有引き上げ」と報じられており、逃避先通貨としての「円」に引き続き信頼を置いているとの事です。
正しい選択ではないかと思います。
そして「リセッション」については、過去コラムでも述べたように、マイクロソフト元会長のビル・ゲイツ氏と米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が「いつ起きるかは分からない。だが確実に起きる」という事で、近い将来に「2008年のような金融危機が確実に起こる」と述べているので、いつ来てもおかしくないと思っておいた方がいいでしょう。
つまり、その際には円高、ドル高、シンガポールドル高になるのではないかという事なのです。
さてサッカーワールドカップ・ロシア大会が終わりました。
海外のトレーダーの中にはサッカー好きも多く、この時期には大きなポジションを取らない傾向があり、ボラティリティ(価格変動性)が小さくなる傾向にあるのですが、ワールドカップも先日終了しましたので、今週からはもっと大きな値動きが出てくるかもしれません。
今回のワールドカップでは、米金融大手のゴールドマン・サックスがAI(人工知能)を使って出した「大会予想」に注目が集まりました。
20万もの統計モデルを使い、100万回ものシミュレーションを行ったという事で、「最新AIの実力を測る物差し」としても注目を集めました。
ところが結果は最近のコラムでもお伝えしてきた通り、「外れてばかり」でした。
しかも途中で予想を変更し、変更した予想も外れたのですが、変更した予想が外れたところで更に新たな予想を出し、その予想さえも外れたという結果でした。
具体的には以下のようになりました。
【変更前】
・ブラジルとドイツが決勝を行い、ブラジルが優勝する
【変更後1】
・ブラジルとイングランドが決勝を行い、ブラジルが優勝する
【変更後2】
・ベルギーとイングランドが決勝を行い、ベルギーが優勝する
上記を見ましたら、AI予想がいかに「外れてばかり」だったか分かると思います。
実際の決勝は「フランスとクロアチア」になりましたし、フランスが4対2で優勝したからです。
しかしAIの予想結果を笑ってばかりもいられないのが、このような「不完全」なAIが、昨年以降は相場の「主役」になりつつある事です。
「不完全」なAIが相場の値動きを主導しているという事なのです。
つまり、長年の経験から「ここは買いだ!」と多くのプロが思うような場面で売り優勢になり、「ここは売りだ!」と思うような場面で買い優勢になっているという事です。
要するに「おかしい」値動きが増えているという事です。
しかし相場の世界がいくら「おかしい」といっても、現在はあらゆる分野でAIによる技術革新が進んできていますし、この流れを止める事はできません。
一方でAIはまだまだ発展途上ですので、相場の世界においては「おかしな値動きをする事もある」と思いながら付き合っていくしかありません。
このような全体像を把握しておく必要があるのです。
その上で、いつ金融危機が起きてもおかしくない、その際には「円高、ドル高、(シンガポールドル高)になる」といった相場観を持って取り組むと良いのではないかと思っています。
先週のコラムでもお伝えしましたが、ウォーレン・バフェット氏の言う「長期的視野と忍耐強さ」を意識しながら頑張っていきましょう。