今回は、イギリスのポンドについて考察したいと思います。
ちょうど、昨年のEU離脱是非を問う国民投票から1年が経ったタイミングであるからです。
イギリスでは、今年に入って様々な事件が相次いでいます。
先日起きた高層マンションの火災事件では、79人が死亡したとみられると発表されました。
3月にはロンドンで自動車暴走テロ事件、5月にはマンチェスターのコンサート会場でアメリカ人歌手アリアナ・グランデのコンサート終了時の爆発テロ事件、今月もロンドンで自動車暴走及び刃物によるテロ事件がありました。
ちなみに、2005年7月にはロンドン同時多発テロ事件があり、この時は56人が死亡しています。
イギリスがテロリスト監視リストに入れている人物は3,000人いるといいます。
しかし、これら要注意人物を全て監視し、テロを未然に防ぐのには、現状人手が全く足りないようです。
テリーザ・メイ首相は2010年に内務大臣に就任しましたが、この時に2万人の警官を削減しています。
そして、この事がテロを防ぐための人手不足を招いたと指摘されており、支持率低下の要因になっているようです。
このような状況の中、6月8日に投開票されたイギリス総選挙では、メイ首相率いる保守党は第1党の座を維持しましたが、過半数割れとなりました。
一方で、ライバルの労働党が大躍進です。
さて、今後要注目なのが、今回の選挙で大躍進した労働党党首である「ジェレミー・コービン」氏になります。
コービン氏は多数の世論調査で圧倒的支持を得ているのですが、どうやら、かなり物議を醸しそうな思想を持った人物のようです。
カール・マルクスを称賛するマルクス主義的言動があり、「最低賃金」だけでは不十分で、「最高賃金」も設定すべきだと主張しています。
ちなみに、コービン氏は、車は持たず、移動はいつも自転車だそうです。
他にもコービン氏の気になる点はたくさんあるのですが、現在及び過去の主張等も含めて、以下に整理をしてみます。
・イギリスの核武装に反対
・IRA(アイルランド独立闘争を行う武装組織)メンバーの追悼式に出席した
・王室廃止を主張
・第二次世界大戦時にドイツ空軍と戦った英空軍兵士たちの追悼式典で、国歌を歌わなかった
・銀行、運輸、電気、ガス、水道の国有化を主張
・NATO(北大西洋条約機構)からの離脱を主張
・「アメリカという戦争マシーンの目的は、欧州や北米の銀行や多国籍企業が支配する世界秩序を維持することだ」と発言
まだまだあるのですが、「かなり物議を醸しそうな思想を持った人物」という事が分かるのではないでしょうか。
イギリスは保守党と労働党の二大政党であり、労働党のトップが上記のような思想を持ったジェレミー・コービン氏である事から、今後のイギリス政治は不透明かつ不安定だといえるでしょう。
昨年、イギリスがEU離脱を選択した際に、私はコラムで以下のように述べました。
【それは、多くのイギリス国民が、移民が増え過ぎたことに対する不満を持っていたからです。
移民が増え過ぎたとは、すなわち人口が増え過ぎたという事です。
人口が増え過ぎた結果どうなったかと言いますと、仕事が無くなる、賃金が低下する、子供が急病になっても4時間待たされる病院、机が足りなくなってしまった学校、住宅不足から家賃が高騰、いつも満員の電車など、生活の質がどんどん低下していったわけです。】
つまり、イギリスについての要点を整理しますと、以下のような事が言えます。
・国民の間に不満がくすぶっている
・政治が不透明かつ不安定
・テロのリスクも依然として高い
これらは、今日明日で解決するような問題ではなく、今後も重くのしかかってくる問題です。
という事は、イギリスのポンドは「売り」目線で見ていくのが正解だと思います。
最近の相場はボラティリティが極めて低く、値動きもおかしい事から、「非常に不思議だ」「どうも理解できない」等の声が多くのプロトレーダー達からも挙がっていますが、必ず修正局面はきます。
したがって、「耐えるべきは耐え」になりますが、皆さんも、今後はイギリスの情勢、イギリスのポンドに注目してみてください。