国民の日常

 

イギリスのEU離脱が決定し、1週間が経ちました。

 

ようやく少し落ち着いてきた感じがします。

 

 

 

イギリスの国民投票は先週行われましたが、次週も米ISM非製造業指数、FOMC議事要旨、ECB理事会議事要旨、ADP全米雇用報告、米雇用統計などの重要イベントを控えています。

 

 

 

こういった重要イベントは間違いなく重要であるのですが、今週のコラムでは「国民の日常に目を向けた分析」も大事である、という事をお伝えしたいと思います。

 

と言いますのも、今回のイギリスEU離脱に関して、事前の世論調査や政府、企業、市場関係者の見方では残留優勢と分析しているものが多くあったからです。

 

「国民の日常に目を向けた分析」がきちんとできていなかったが故に残留優勢との判断に至った、という事でもあると思うのです。

 

結果として、624日のイギリスEU離脱決定によって、ポンドは31年ぶりの大暴落となりましたし、世界の株式市場では215兆円の損失が生まれた、と言われています。

 

 

 

例えば、「国民の日常」に目を向けますと、国民投票の数週間前から、ポンドをドルやユーロに両替しようという事で、両替所には長い行列ができていた、と報じられていました。

 

日本の銀行でも、両替用としてポンドやドルを積み増していた、と報じられていました。

 

ですので、たとえ残留優勢と報じられていても、人々や銀行などは離脱の可能性に対してきちんと保険をかけていた、という事が分かります。

 

一方で、国民投票当日には、イギリス人の旅行客がギリシャなどの観光地でポンドをユーロに両替しようとしても、あまりの混乱から両替ができなかった、といった事態も報じられました。

 

 

 

では今回、イギリスはなぜEU離脱を選択したのでしょうか?

 

それは、多くのイギリス国民が、移民が増え過ぎたことに対する不満を持っていたからです。

 

移民が増え過ぎたとは、すなわち人口が増え過ぎたという事です。

 

人口が増え過ぎた結果どうなったかと言いますと、仕事が無くなる、賃金が低下する、子供が急病になっても4時間待たされる病院、机が足りなくなってしまった学校、住宅不足から家賃が高騰、いつも満員の電車など、生活の質がどんどん低下していったわけです。

 

 

 

上記のような現実こそが「国民の日常に目を向けた分析」であり、ここをきちんと分析できていなかったが故に事前の世論調査や政府、企業、市場関係者の見方では残留優勢といった分析に至ったのだと思います。

 

 

 

したがって、今回の件を踏まえても、移民問題、すなわち人口増加問題は非常に深刻な問題になっていると捉えるべきです。

 

 

 

そして、この移民問題、人口増加問題は他のEU諸国でも非常に問題視されているものであり、今後イギリス同様、他のEU諸国でも離脱派が益々勢いづくのは必至です。

 

第二、第三のイギリスが出てくる可能性もあるわけで、欧州自体が鬼門のようになっています。

 

実際に、イギリスのEU離脱についてBrexitなる言葉がありますが、ここにきてフランスのEU離脱についてもFrexitなる言葉が聞かれるようになってきているのです。

 

 

 

相場の世界では、常に一方向に値段が動くという事はありませんが、中長期的にユーロは売り優勢と判断する方が賢明だと思います。

 

 

 

そして、今回EU離脱を選択したイギリスですが、当然ポンドも売り優勢と判断する方が賢明です。

 

イギリス国内では、首都ロンドンが国として独立し、単独でEUに再加盟するという話が出てきていますし、スコットランドも国として独立し、ロンドン同様にEUに再加盟しようという話が出てきています。

 

一方で、離脱派が多かった北アイルランドやウェールズでは、イギリスからの独立を求める動きが出てきています。

 

このような状況ですから、イギリス自体が非常に不安定になってきているという事で、不安定であるならポンドは売り優勢と判断するのが妥当です。

 

 

 

いずれにしましても、たとえ日本であっても米国であっても、「国民の日常に目を向けた分析」というのはとても大事であると思います。

 

そして、「国民の日常に目を向けた分析」は、時に専門家の分析よりも正確な判断に至る事があります。

 

 

 

雇用統計などのイベントを重視するのはもちろんなのですが、相場をやっていく上では、それ以外にも「国民の日常」に注目する習慣を持つ事が大事であると思います。