「イギリス、EU離脱か残留か」という事で、最近はイギリスのEU離脱に関するニュースが増えてきています。
「イギリスがEU離脱と言ってもピンとこない」という方もいるかと思います。
そこで今週のコラムでは、この事をテーマにしていきたいと思います。
そもそも、EUとは欧州連合の事です。
EUは経済力を高めてきた日米に対抗するという目的もあって設立されたと言われていますが、そのためにも、あたかも国家であるがごとく、一体となって行動していこうというスタンスになっています。
現在、イギリスをはじめ、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン等28か国がEUに加盟しています。
加盟国28か国中、19か国が単一通貨ユーロを使用しています。
EUは域内で、人、モノ、サービス、資本の移動が自由な単一市場を形成しています。
つまり、通常は貿易にかかる関税も、加盟国間の貿易では関税はかからないという事です。
関税の目的につきましては、学校で習った記憶がある方もいるかと思いますが、国の税収を上げる事に加えて、自国の産業保護や市場経済の混乱の防止等を目的としています。
自国よりも安い人件費や生産コストで大量に物品を作ることができる国から大量の物が無関税で入ってくると、国によっては、ある産業が消えてしまう可能性があります。
ある産業分野が消えてしまうことで、別の産業へも影響は波及し、雇用がなくなる、という直接的な影響だけでなく、将来的にその物品すべては輸入に頼らざるを得なくなるという問題もあります。
したがって、ほとんどの国では品目等で関税率を個別に設定し、国内の産業を守ることをしています。
しかし、EUではあたかも国家であるがごとく一体となって行動していこうという事で、つまりEUは域内で、人、モノ、サービス、資本の移動が自由な単一市場を形成するという事で、関税がかからないようにしているわけです。
そして、EUといえば、同時にシェンゲン協定についても触れておく必要があります。
シェンゲン協定とは、出入国審査なしで国境を自由に往来できることを定めたヨーロッパ国家間の協定のことです。
しかし、EU加盟国の中でも、イギリスやアイルランド、クロアチアはシェンゲン協定には加盟しておりません。
ここまでの説明を踏まえてですが、なぜ「イギリス、EU離脱か残留か」という事態になっているのでしょうか?
実際に、今年の6月23日には国民投票となっています。
理由はいくつかあります。
「あたかも国家であるがごとく、一体となって行動していこうという」と前述しましたが、その事によって、イギリスにも大量の移民が入ってきました。
その事によって、「移民に雇用が奪われている」との不満がイギリス国内で蓄積していると言われているからです。
さらに、2011年以降のユーロ危機の問題です。
イギリスはご存知の通り、通貨はユーロではなくポンドを採用していますが、それでもEU加盟国だからという事で、ユーロ危機に巻き込まれたからです。
もちろん、ユーロを採用している国々に比べますと災厄は逃れていますが、それでも巻き込まれたという結果があります。
これらの理由によって、イギリスでは現在EU離脱論が高まっているのです。
では、いざEU離脱となりますと、イギリスはEUの様々な規則から逃れられるかわりに、今度は関税の問題に直面します。
イギリス企業の輸出競争力という点で考えますと、関税の問題が不利に働きます。
こんな中で、「イギリスのEU離脱を阻止せよ」と残留の声を挙げているのが、ゴールドマン・サックスやHSBCといった金融界なのです。
実はその理由というのが、「近く金融危機が起こりそうだから」だと噂されています。
金融界からしますと、いざ金融危機が起こった時にイギリスがEUから離脱して孤立している状態よりも、EUに残留していた方がEUからの支援も期待できるとの計算が働いているようです。
という事で、「イギリス、EU離脱か残留か」は、今世界中が注目しているテーマなのです。
もし、イギリスがEU離脱という事になれば、通貨ポンドへの求心力は低下して、大幅なポンド安になるとみられています。
今年の6月23日に国民投票がありますが、それまでの間でも、世論が離脱に傾いたり、残留に傾いたり、といったような報道によって、ポンドの乱高下があると思います。
ドルやユーロだけではなく、当面はポンドの動きにも要注目なのです。